<安保法制>ガイドライン再改定で日米同盟はどう変わる?
他国での平和実現・維持を目指す場合
次は、他国において平和を実現し、維持する場合です。通常は国連決議に従い複数の国が参加します。これはさらに、国連平和維持活動(PKO)のように、紛争が終了あるいは停戦が成立している場合と、紛争が継続している場合に分けて見ていく必要があります。日本国憲法9条は「国際紛争を解決するために武力を行使してはならない(分かりやすい言葉で言い換えています)」と規定しているので、紛争が終わっておれば日本は行動しやすいですが、終わっていなければ憲法違反などさまざまな問題があり得るからです。 PKOにおいては、従来、自衛隊の武器使用は非常に制限されており、国連としての義務を果たす上で障害となっていましたので、国連加盟国として通常の武器使用を自衛隊にも可能にする方向で法整備が進められています。新「指針」はこれに対応して、自衛隊は同じ任務に従事する、つまり同じPKOで活動する各国の部隊を保護できると明記しました。その中には米国の部隊ももちろん含まれます。 一方、いわゆる多国籍軍の活動に自衛隊が何らかの形で協力する場合、PKOと異なり、紛争は終結しておらず、日本国憲法が固く禁止している、国際紛争に日本が巻き込まれる危険があります。それでも、日本はこれまで、アフガニスタンやイラクでの多国籍軍の行動に一定程度協力しました。しかし、戦争に直接参加するのでなく、戦闘が行われていないことが確かめられる地域(非戦闘地域)に限定して、給油、輸送、道路工事など可能な限りの協力を行ないました。 しかし、これらの場合のように問題が起こった後で特別法を作るのでは時間がかかりすぎて機動的に対応できないので、政府は、いつでも迅速に行動を開始できるように恒久法(期間を限定せずに施行される法律)として「国際平和支援法案」を制定しようとしています(14日に閣議決定された法案の一つ)。 新「指針」では「三か国間および多国間の安全保障及び防衛協力を推進・強化する」ことなど原則的な方針のみを記載しています。 他国が第三国から武力攻撃を受けた場合も、通常は国連が関与し、多国籍軍が派遣されますが、一定の期間に限って、例えば朝鮮半島などで米軍だけが行動することがあり得ます。これに自衛隊の協力が求められる場合、新「指針」では、「自衛隊は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に対処し、日本の存立を全うし、日本国民を守るため武力の行使を伴う適切な作戦を実施する」と定められました。これに該当する事態は「存立危機事態」と呼ばれています。 この種の国際協力については、国連が対応する前でも後でも、日本が紛争に巻き込まれないための保証をどのように確保するかが重要なポイントとなります。日本の閣議で決定された集団的自衛権行使のこの要件はそのための重要なカギとなるものであり、新「指針」もほとんどそのまま引用しました。 機雷の掃海は、紛争が継続中に行なわれると、米国と敵対している国から日本も敵対しているとみなされ、ひいては紛争に巻き込まれる危険がありますが、同じくこの要件にしたがって自衛艦派遣の有無が決定されると思われます。