【#佐藤優のシン世界地図探索91】"トランプ王"誕生の余波が韓国から北朝鮮、そして日本に...
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――昨年の米国大統領選に勝利したことで、トランプは"王"となりました。前々回まで4回にわたりその影響を話していただきましたが、さっそく"トランプ王"就任の余波が全世界に波及しているのは本当ですか? 佐藤 まず、バイデン米大統領が自分の息子を恩赦したのはある意味、トランプの影響を相互に受け合っていると考えられます。要するに、バイデンを「王」だと考えれば、まったく問題がないということです。 大統領は100%、憲法と法令に従います。それに対して、王は状況によっては従わなくていいのです。それが王と大統領の違いです。恩赦とは、合法的に法の効力を全てチャラにしてしまう行為です。つまり、行政のトップが合法的に法の枠を超えられる例外措置です。 ――はい。 佐藤 なぜ、そうした装置を設けているのか。もし、憲法と法令が完璧に強固なものならば、結局、法の秩序を壊すクーデターが起きるからです。だから、あえて法の枠を超えるような事態の時に備えて、特殊な措置を用意しているのです。 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が発令した戒厳令は、まさに非常事態で限定的に法を超えるものです。それも、ネットが影響を与えたと言われていますが、トランプが影響を与えていると思いますよ。 ――そうですよね。 佐藤 だけど、韓国の王様は6時間しか持ちませんでした。 ――「6時間限定の王様」。しかし、あれだけトランプを非難していたバイデンも、最後にはトランプを見て王になってしまった。 佐藤 鏡像効果です。鏡に映しているうちに、段々と似てくるんですよね。 ――韓国の尹大統領の場合は、トランプ王の真似をしようと思ったら、限りなくシリアのアサド大統領になってしまったという感じでしょうか? 韓国軍に見捨てられましたからね。