好調な宇都宮LRTの初年度 地域の移動手段として定着 梅原淳
宇都宮ライトレールには小中学校を中心に車両を貸し切りたいとの要望が寄せられ、6月1日から貸し切り運行が開始された。利用者の増加とあいまって、現状で3車体が1編成となった車両が17編成在籍する体制では、貸し切り運行時に不測の事態が重なった場合に安定した運行が難しい。そのため、宇都宮市は今年2月、2編成を27年3月期までに追加で導入することを明らかにした。 ただし、昨今の物価上昇の影響で車両価格の高騰が懸念される。開業に向けて用意された17編成の価格は1編成当たり4億4000万円だった一方、追加導入分は1編成当たり7億5000万円と見込まれている。特殊構造を備えた車両だけに、価格の大幅な引き下げは難しい。だが、LRT用の車両の製造は17編成を製造した新潟トランシス(新潟県)以外にも、アルナ車両(大阪府)や近畿車輛(大阪府)も担当しており、両社の参入によって車両価格の高騰を多少は抑制できるかもしれない。 今後の展望として、宇都宮駅の西側方面約5キロの延伸が現実味を帯びてきた。宇都宮市が今年2月に公表した計画では、宇都宮駅東口停留場からJR東日本の線路を越え、大通りを通って教育会館前停留場まで12カ所の停留場を設置するという。事業費は約180億~210億円で、今回開業した区間と合わせて営業利益は年間約2億円となる見込みだ。 一部で道路の拡張が必要なこともあり、開業予定時期は30年代前半と少々先だが、今回の宇都宮ライトレールの好調な出足により、沿線では開業を待ち望む声が高まっており、期待が膨らむ。 (梅原淳〈うめはら・じゅん〉鉄道ジャーナリスト)