大の里 大関昇進へヒヤヒヤ発進 攻め込まれるも土俵際で逆転「勝つと負けるでは違う」
「大相撲秋場所・初日」(8日、両国国技館) 大関昇進を目指す関脇大の里(24)=二所ノ関=は平幕熱海富士(伊勢ケ浜)をはたき込み、白星発進した。攻め込まれて物言いがつく内容ながら土俵際で逆転。初日の重圧の中、薄氷を踏む勝利を挙げた。大関陣は、名古屋場所を右内転筋のケガで途中休場した豊昇龍(立浪)が隆の勝(常盤山)に敗れ、4場所連続の初日黒星。琴桜(佐渡ケ嶽)は小結平戸海(境川)に快勝した。今場所10勝以上で大関に復帰できる関脇貴景勝(常盤山)は御嶽海(出羽海)に屈し、痛い黒星発進となった。 勝利という事実が、何より心を落ち着かせた。支度部屋で腰を下ろした大の里の顔に、安堵(あんど)の色が浮かんだ。「勝つと負けるのでは違う。ああいう良くない相撲でも、勝ちに結びついたのはよかった」。滑り出しの1勝は、どんな形でもいい。前向きに受け止めた。 熱海富士に左上手を許すと、得意の右を差して前に出たが、上手投げで回り込まれて大ピンチに。続く突進を左にかわし、相手が落ちるのとほぼ同時に土俵を飛び出した。物言いの結果は、相手の左手がつくのがわずかに先。軍配通りでも、ヒヤヒヤの白星だった。 今場所12勝以上で、大関昇進目安とされる三役で3場所合計33勝に到達する。好成績で昇進の可能性があった名古屋場所は連敗発進。雑念に乱された。それだけに「この入りが大事だと思っていた。勝てたのが大きい」と重みを口にした。昇進を預かる審判部は内容を重視する方針だが、幕内後半戦の粂川審判長(元小結琴稲妻)は「まだ初日だから。全部そんな相撲ばかりじゃないでしょう」と期待を込めた。 史上最速Vを飾った夏場所の優勝額が、この日から国技館内に掲げられた。観戦した父・知幸さんにも白星を届けた大の里。「先のことは考えず、目の前の一番一番に集中して頑張ります」。まだ大銀杏(おおいちょう)が結えない前代未聞の“ちょんまげ大関”誕生へ、24歳の大器はここからギアを上げていく。