今後の年金「国民年金保険料納付の5年延長」は断念?2024年度財政検証のポイントを解説
2024年7月3日、厚生労働省より年金制度の財政検証の結果が発表されました。 財政検証は、年金財政の健全性を確認し制度の見直しに役立てるために5年に一度実施されます。 ◆【一覧表】私たちの年金は将来どうなる?将来の所得代替率を経済成長率ごとに見る 老後の貴重な収入である年金が今後どうなるか、気になる人も多いでしょう。 この記事では、2024年度の財政検証の結果について解説します。今後予想される年金改革についても紹介しますので、老後対策を考えるときの参考にしてください。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
2024年度の財政検証の結果
財政検証とは、何パターンかの前提条件をもとに年金財政の見通しを作成し健全性を検証することです。 財政の健全性は所得代替率(※)50%を最低ラインとして判定し、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合、必要な措置を講じることになります。 ※現役男子の平均手取り収入額に対する夫婦2人の年金額の比率。 財政検証で判明した現状と将来の見通しについて解説します。 ●2024年度の現状 2024年度の所得代替率は、次の通り2019年度(前回の財政検証実施年度)より0.5%低下して61.2%となりました。 モデル世帯について、夫婦2人の年金収入が現役世帯の61.2%であったということです。 ・所得代替率=(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)/現役男子の平均手取り収入額 ・2019年度の所得代替率=(13万円+9万円)/35万7000円=61.7% ・2024年度の所得代替率=(13万4000円+9万2000円)/37万円=61.2% 2019年の財政検証では所定の前提条件のもと、2024年度の所得代替率は60.0%台まで低下すると推計されていましたが、実際には所得代替率が推計を上回る結果となりました。 ●公的年金の今後の見通し 財政検証の見通しは、出生率や死亡率、就業率、生産性、物価・賃金上昇率などについて何パターンかの前提条件を設定して所得代替率を予想します。 給付水準の調整終了年度(※)と最終的な所得代替率の見通しは次の通りです。 ※マクロ経済スライドによる給付水準調整が終了する年度。 年金の給付水準を所定のルールに基づいて減額し、年金財政の給付と負担のバランスが均衡すると調整は終了します。 【前提条件:2029年度の所得代替率・調整終了時の所得代替率・実質経済成長率】 ・パターン1(高成長実現コース):60.3%・56.9%(2039年)・1.6% ・パターン2(成長型経済移行・継続コース):60.3%・57.6%(2037年)・1.1% ・パターン3(過去30年投影コース):60.1%・50.4%(2057年)・▲0.1% ・パターン4(1人当たりゼロ成長コース):59.4%・50.1%(2059年)・▲0.7% 一定の経済成長(パターン1.2)ができれば所得代替率の低下は5%くらいで収まりますが、経済成長率が低迷(パターン3)すると50.4%まで低下します。 パターン3の「過去30年投影コース」は、今後の経済成長率などが過去30年と同様であるという前提での試算です。 1人当たりの実質経済成長率がほとんど上がらないケース(パターン4)では、2059年度に国民年金の積立金がなくなり、それ以降の所得代替率は37%~33%程度になる可能性もあります。 財政検証の現状と今後の見通しについて解説してきましたが、年金制度は今後どのような見直しが行われるのでしょうか。 財政検証のオプション試算より、今後の制度改正を考えていきましょう。