今後の年金「国民年金保険料納付の5年延長」は断念?2024年度財政検証のポイントを解説
年金制度改正の可能性のあるオプション試算の内容
2024年度の財政検証では、次の5つの制度改正を行った場合の所得代替率をシミュレーションしています。 ・被用者保険の更なる適用拡大 ・基礎年金の拠出期間延長・給付増額 ・マクロ経済スライドの調整期間の一致 ・在職老齢年金制度 ・標準報酬月額の上限 それぞれについて解説します。 ●被用者保険の更なる適用拡大 被用者保険とは、厚生年金保険や健康保険のことです。 現在、短時間労働者の社会保険加入が適用されているのは従業員数101人以上の事業所ですが、2024年10月からは従業員数51人以上の事業所に拡大します。 「更なる適用拡大」とは、2024年度10月の改正よりも更に社会保険加入要件を緩和しより多くの人が社会保険に加入できるようにすることです。 保険料を負担する加入者が増えることによって、所得代替率もアップします。 ●基礎年金の拠出期間延長・給付増額 基礎年金の拠出期間延長とは、国民年金の加入期間を延長することです。 現在は20歳から60歳までの40年間ですが、65歳まで延長することによって加入期間は45年になります。 加入期間が長くなることで年金額がアップし、所得代替率も次の通りアップします。 ・成長型経済移行・継続コース:57.6%→64.7% ・過去30年投影コース:50.4%→57.3% ただし、保険料負担が100万円程度増えるため、厚生労働省は来年の制度改正では国民年金保険料の納付期間の5年延長を見送る方針です。 ●マクロ経済スライドの調整期間の一致 マクロ経済スライドによる給付水準調整の終了時期は、基礎年金と厚生年金とでは異なります。 基礎年金は加入者が減少しているのに対し、厚生年金加入者は増えているからです。 両者を一致させた場合、所得代替率は次の通りアップします。 ・成長型経済移行・継続コース:57.6%→61.2% ・過去30年投影コース:50.4%→56.2% ●在職老齢年金制度 在職老齢年金制度とは、働きながら年金を受け取る場合、年金額や給与所得の多い人の老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される仕組みのことです。 この制度によって、年金の支給は抑えられています。 制度が廃止されると働きながら年金を受け取る人の年金額はアップしますが、所得代替率は低下(▲0.5%)します。 ●標準報酬月額の上限 厚生年金の保険料や年金額の計算基礎となる標準報酬月額には、65万円の上限が設けられています。 上限の金額がアップすると、収入が高い会社員の保険料がアップする一方、年金額は上昇し所得代替率もアップします。