池松壮亮が語る「俳優としての責任と覚悟」――感じた違和感を口にすることの大切さ
――その甲斐あって映画ではベテランっぽく滑っていましたね。スケートの先生から演技のヒントを得たりもされたのでしょうか。
池松:5、6人の先生から熱心に辛抱強く教えていただきました。年齢も性別も経験も、教え方もさまざまな先生方に指導してもらいながら、それぞれの風情や子供たちと接する姿、指導する姿を見せてもらえたことが、演じる上でとても大きな支えになりました。半年という時間で、何十年も息をするように氷の上で滑ったり指導してきたコーチの人生に、技術の面で届くことはスケートに限らずできません。そのことを前提に、風情や身体に宿る癖や習慣に触れていくことが演じる上で少しでも助けになると思っていました。
共演者、そして奥山監督について
――タクヤ役の越山敬達くん、さくら役の中西希亜良さんなど、子供たちとの共演はいかがでした?
池松:学びや発見、驚きばかりでした。こんなふうに感じるんだとか、こんな表情するんだとか、日々2人に感動させられました。子供は大人よりも反射能力が高く、その分対峙する自分の態度や向き合い方が問われる感じがあります。今作は2人の輝きがそのまま作品力に直結すると思っていましたし、コーチという役柄だったことも相まって、どうしたら2人がそれぞれの持つ個性と輝きをこの映画で存分に発揮できるのか、いつも考えていました。2人がいま何を感じていて、どんな気分で、どんなことに反応しているのかに敏感でありたいと思いました。2人ともシャイで、控えめで、無垢で、感性が鋭くて、感じたことや言葉にならないことを表現することを恐れない、原石の塊のようでした。奥山さんが今作にかけがえのない2人を選んでくれたと思っています。2人が映画をみんなで作ることの喜びや、演じることの喜びを、なんとか記憶として残してくれるように、自分にできる限りのことをやりたいと思っていました。
――一方、荒川の恋人、五十嵐を演じた若葉竜也さんとは「愛にイナズマ」では兄弟として共演されていました。今回は全く違った関係性での共演ですね。