岡ちゃん“秘蔵っ子”が湘南を勝利に導いた理由とは?
ゴールは自身の武器と経験をフル稼働させた末に生まれた。自陣の中央で横パスを受けた小野田は、ドリブルで縦へ突破する青写真を描く。50mほどボールを前へ運んだところで、左サイドにいたFW山崎凌吾へパス。そのままペナルティーエリア内へ侵入し、山崎の折り返しに右足を合わせた。 「あの位置からスピードに乗って上がってこられると、相手の選手もマークにつきづらい。自分が守る側になってもかなり嫌な動きのひとつなので」 記念すべき瞬間をこう振り返った小野田は、高校卒業時にJクラブからオファーを受けなかった自分を今治が見出し、さらにはベルマーレが評価してくれたサッカー人生へ「本当に恵まれていると思う」と笑顔を浮かべながら、あらためて感謝の思いを捧げた。 「岡田さんの『調子に乗るな』も、愛情の裏返しの言葉ですよね。僕自身、まだまだ満足していないし、シーズンを終えたときにチームがいい結果を残していることが、自分への評価につがなるとも思っている。岡田さんや曹監督の言葉を真摯に受け止めながら、これからも頑張っていきたい」 岡田氏からは「頼んだぞ」という類の言葉はかけられていない。オファーを受け入れ、小野田を預けてくれたことがすべてだと曹監督は受け止めている。 「そういう思いを受けて、しっかりやらないといけない。僕が言うしっかりとは、甘やかさないという意味ですけど」 62歳の岡田氏と50歳の曹監督。干支がひと回り異なる2人の強い絆が小野田のシンデレラストーリーを花開かせ、たまたまチャンスを得られず、JFLやその下部に位置する地域リーグなどで努力を重ねる隠れた逸材たちにも、頑張れば夢は果てしなく広がるというメッセージを届けた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)