天の川銀河の恒星ブラックホールとしては最も重い「Gaia BH3」を発見
欧州宇宙機関(ESA)が2015年に打ち上げた宇宙望遠鏡「ガイア」は、恒星などの天体の位置や運動量を非常に正確に測定することを目的としています。収集されたデータはカタログ化され、5段階に分けて公表される予定です。現在では3段階目となる「DR3」までが公表済みで、4段階目となる「DR4」を作成中です。 観測史上地球に最も近いブラックホール「Gaia BH1」を発見 国際研究チームのガイアコラボレーションは、作成中のカタログであるDR4の暫定版について、何か異常なデータが含まれていないかを検証してきました。その結果、見えない天体の周りを周回していると推定される、極端な動きをする恒星が見つかりました。見えない天体は太陽の約32.7倍もの質量を持つブラックホールである可能性が極めて高いため、ガイアコラボレーションはこれを「Gaia BH3」と名付けました。 Gaia BH3は、恒星から直接誕生したブラックホールとしては、天の川銀河で知られているものの中で最も重いブラックホールであると考えられています。また、地球からの距離は約1926光年で、知られている中で2番目に地球に近いブラックホールでもあります。
■位置天文学に欠かせない宇宙望遠鏡「ガイア」
夜空にある星々は一見動いていないように見えますが、実際にはわずかながら移動しています。天体の移動を正確にとらえると、その天体までの距離や地球に対する運動方向、さらには暗くて見えない伴星の存在を知ることができます。このように、天体の移動をもとに研究を行う分野を「位置天文学」と呼びます。 ESAが2015年に打ち上げた宇宙望遠鏡「ガイア」は、位置天文学における重要な存在です。これまでに10億個以上の天体を観測し、正確な位置や距離、運動方向や速度などのデータを収集しています。ガイアが収集した数多くのデータが無ければ研究できなかった成果も数多くあります。 ところで、ガイアが集めた天体のデータはカタログ化されていますが、10年の運用期間で少しずつデータの精度を向上させるため、5段階に分けて公開されています。現在使われている最新版のカタログは、2022年に公開された3段階目の「DR3」です。 4段階目となる「DR4」は、2025年末までに公開することを目指してデータの分析が進められています。DR4はDR3よりもさらに精度が優れているため、これまで見つけることができなかった新たな発見につながるかもしれません。