【実走1300キロ】マツダ「MX-30ロータリーEV」の実燃費を辛口モータージャーナリストが検証! 高速と街乗りで極端な差が…
低ミュー路ではアンダーステアが顔を出す
一方で、ハンドリングには明確な影響をもたらしている。ドライ路面であれば、普通にドライビングをしている限り、普通に曲がるように感じさせるが、雪道など低ミュー路になると、いかにも頭の重さを知らしめるアンダーステアが顔を出すようになる。 コーナーへの進入では、そもそも前輪の接地荷重が大きいことに加えて、モーターのトルクコントロールにより一瞬前荷重とさせるGベクタリングコントロールが有効に働くが、そこから先は、フロントヘビーによる慣性と、電動駆動車でよく経験する、コーナー出口に向けてのごく軽いアクセルオンでも、モーターのトルクが瞬時に高まる特性と相まって、ドライバーが想定していた以上のアンダーステアに転じたりする。正直、雪道のコーナーにおけるコントロール性は、感心するものではなかった。 これは、低ミュー路なので、低い速度域、低い横G領域でもわかりやすく生じたものだが、基本特性としてドライ路面でも同じということ。箱根でのワインディングでも、高い横G領域に持ち込むとアンダーステアが強いこと、ドライ路面ではそうした際の前輪への負荷が大きいこともよく知れた。 反面、車重が増したこともあり、乗り心地には落ち着きも得られているし、直進安定性も、ACC使用時のレーンキープアシストが車線間を右に左にふらふらとしたがる不出来を別とすれば悪くないなど、普段使いの領域では快適性を備えた走りを得られている。
日常の足のPHEVとして使うなら長所が上回る
では、このMX-30ロータリーEVというクルマをどう捉えるべきか。あくまでもPHEVとして、日常は大半をEVとして走らせることができる使用環境、移動距離であれば、REの燃費の悪さもそれほどデメリットにならないだろうし、そのうえで長距離移動の際の安心感も備えていることになる。また、急速充電を備えたことで、出先でもちょっとした合間に満充電まで可能なため、EVとして走らせることができる距離が稼げることも強みとなるだろう。 そうしたことを勘案した上でも、シリーズハイブリッド用に開発された8C型REの燃費性能は褒められるものではなく、そのうえ重量においても、また音の面でも苦労していることを知れば、目的と手段のプライオリティが逆転しているようにも思えてしまう。 ただ、いちクルマ好きの立場から、とさせてもらえるなら、現状のSKYACTIV-Xとも同様に、これはもうマツダのロマンとして見守っていきたいと思わせるところが、なんとも悩ましいところなのだ。
斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)