37万円の発酵ツアーが即完売。米国でキッコーマンを超えるSAN-Jの挑戦
デンマークのミシュラン三ツ星レストラン「ノーマ(noma)」が、10月から京都のホテルで期間限定のポップアップを展開している。 同店の世界的な評価を支えてきた理由の一つには、その卓越した発酵技術がある。発酵を料理の中心に据えてきたノーマのこれまでの躍進は、世界で広まりつつある「発酵ブーム」を象徴していると言えるだろう。 ※ノーマの公式サイトによると、レストランは2024年に閉店し、2025年からはレストランを実験室に変えて、研究や開発を中心に活動していく予定。 世界の発酵食品市場は急成長しており、2023年には5781億ドル、2033年までには年平均成長率(CAGR)5.6%で約1兆ドルに達すると予測されている。 発酵ブームはアメリカでも高まっていて、2022年の国際食品情報評議会(IFC)の調査では86%のアメリカ人が、摂取する食品の健康への配慮を意識していると答えている。特に新型コロナウイルスの時期には、キムチや味噌などの需要が増加した。 その発酵ブームの波に乗り、発酵技術でビジネスを拡大する企業が増加する中、アメリカ市場で日本の発酵文化を広めている企業がある。米国人に「TAMARI」として親しまれる「たまり醤油」を製造・販売するサンジェイインターナショナル(SAN-J)だ。 三重県の老舗醤油メーカー「サンジルシ醸造」の米国法人として設立された同社は、グルテンフリーの醤油をアメリカ市場で販売し、自然食品の分野でキッコーマンを凌ぐ30%以上のシェアを占める。これにより過去20年間で売り上げは5倍に成長し、2024年も二桁成長を続けている。 同社が近年、醤油の販売にとどまらず、発酵ツーリズムや発酵調味料の開発など「発酵」を軸にしたビジネスに手を広げているのはなぜなのか。背景には、佐藤隆社長の“日本の発酵文化への危機感”があった。 ■世界が「発酵」に向ける熱い視線 1978年、バージニア州リッチモンドで設立されたSAN-J。徹底的な現地化戦略や現地生産で米国の新たな醤油市場を切り開き、2001年には父親の後を継ぐ形で佐藤氏が社長に就任した。 「発酵なんて昔からあるもので、地味で面白くない。最初はそんな風に思っていました」 そう語る佐藤氏が「日本の発酵文化を世界に広める」という戦略に大きく舵を切ったきっかけは、Instagramだった。