再エネSPAの自然電力、「本気の脱炭素」で新エコシステムを創出
11月25日発売のForbes JAPAN2025年1月号の特集「日本の起業家ランキング2025」で1位に輝いたのは、自然電力の磯野謙、川戸健司、長谷川雅也だ。 再エネ業界のSPA(製造小売業)として成長してきた同社の事業は新ステージに突入した。 自然エネルギーのスタートアップとして創業して約13年。グローバル10カ国で事業を展開し、エネルギーの開発実績は原発1基分を超える1262.5MW(2024年6月時点)と順調に成長していた自然電力が、いよいよ次のステージに進む。 24年3月には、創業期からの戦略的パートナーであるドイツのJUWIと合弁で経営してきたふたつの中核会社の全株式取得を発表した。自然電力のビジネスモデルは、再生エネルギーのSPA(製造小売業)。自社グループで風力や太陽光の発電所を開発して、EPC(設計・調達・建設)、販売、運用保守まで一気通貫で手がける。ただ、代表取締役の3人、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也が会社を立ち上げたときには十分なノウハウがなかった。再エネに関するさまざまな知見を吸収するため、12年に手を結んだのが、再エネの世界トッププレイヤーであるJUWIだった。 「例えば、会社で調達するパソコンは、メーカーが地球温暖化問題に対してどのような活動をしているかで選んでいました。カウンターパートのドイツ人は、『家では冷蔵庫を使わない暮らしをしている』と。こういう本気の人たちが集まる企業なら、僕たちも学べると思いました」 実際、12年間の協業で学んだものは多かった。どんな場所に発電所を建てるといいのか。地域と合意形成するにはどうすればいいのか。難しい場所にはどのような工法が適しているのか。世界トップのノウハウが自然電力の血肉になった。今回、“卒業”に至った経緯を川戸が解説する。 「同じことをやるのでも、合弁だとどうしても調整などのコストがかかります。品質の高い再エネを低コストでスピーディに届けるには、100%子会社にして最適化したほうがいい。ただ、目指す方向は同じ。JUWIとの提携関係は今も変わりません」 両社が同方向を向いていることは再編後の陣容を見てもわかる。本社から出向していたマネジャーは合弁解消時に戻るケースが多いが、今回は2人のマネジャーが自然電力グループに残った。 「もともとパーパスに共通するものはあったのですが、一緒にやっていくなかで2人は僕たちの本気も感じ取ってくれた。国際的なパートナーシップがこのようなかたちで発展したのは大きい」(長谷川) 国内でも見逃せない動きがあった。24年7月、エネルギーテックを担う子会社Shizen Connectが、大手電力会社を含む8社から計8.6億円の資金調達を行ったのだ。 実は近年、再エネの拡大により、太陽光で発電された電力が余る場面が出てきた。そこで注目されているのが、企業や家庭の蓄電池やEVをネットでつなぎ、ひとつの発電所に見立てて需給バランスを調整する仮想発電所(VPP)技術。Shizen Connectはプラットフォームを開発・運用し、提携先企業をはじめ、電力業界のさまざまなプレイヤーが活用できるVPPとして社会実装を進めている。