再エネSPAの自然電力、「本気の脱炭素」で新エコシステムを創出
創業メンバー3人の関係性に変化は
自然電力は2年前にカナダの大手年金基金CDPQから700億円の大型調達をして話題になった。一方で、今回は額に表れないインパクトが期待できるという。磯野の解説はこうだ。 「インフラを安全かつ安定的に運用する電力産業と、イケイケなテック業界はカルチャーが違って、あまりつながっていなかった。これは世界的に見ても同じこと。再エネに特化してふたつの世界をつなごうとしている僕らは、かなりユニークなポジションといえます。実績を積み上げてきたことで、今回、多くの電力会社に組んでいただけた。日本で実装できれば、世界でもみんなをつなげられます」 ■三者三様の成長がポジティブに作用 飛躍のときを迎えている自然電力だが、創業メンバー3人の関係に変化はないのか。そう問うと川戸は「一人ひとりは変わりましたよ」と答えた。 「磯野はぶっ飛んだ発想をするタイプですが、最近はぶっ飛びながらも地に足がついてきた。長谷川は人をつなげる力が昔からすごかったけど、それに磨きがかかって仲間を増やしている。ふたりを見ていると刺激になります。僕は11月からシンガポールに拠点を移しますが、それも僕自身が成長して刺激を与えたいという思いからです」 これを受けて、磯野は自身の成長について次のように自己分析した。「4年前から長野の森のなかで暮らしています。気候変動は社会問題ですが、自然に身を置いて風や植物を定点観測していると、地球のためにやるべきことが足元から見えてくる。その視点を得たことが、『地に足がついた』ということなのかも」 一方、人を巻き込む力が増したと評された長谷川は悔しさをにじませた。 「僕らも前進していますが、現実には起業時より温暖化が進んで甚大な災害も増えている。ビジネスとしてもうかれば満足という考えは一切ない。もっと多くの人を仲間にしてインパクトを大きくしなければいけない。その焦りがあります」 普段は別々の場所で活動する3人だが、屋久島に泊まり込み、自然の循環を肌で感じながら脱炭素を話し合う合宿は毎年欠かしていない。三者三様の成長がお互いにポジティブに作用し合っているのも、根本の価値観を共有できているから。次のステージで3人がどのように変わっていくのか、今後も目が離せない。 磯野 謙、川戸健司、長谷川雅也◎3人は2005年から風力発電事業のベンチャー企業に勤務。東日本大震災を契機に、2011年6月、「青い地球を未来につなぐ」をパーパスに掲げ自然電力を設立。 「Forbes JAPAN」2025年1月号では、「日本の起業家ランキング 2025」BEST10に選出された10組の起業家たちのインタビュー記事のほか、日本発の主要なスタートアップ起業家を網羅した新企画「日本の起業家名鑑400」、VC業界が注目する「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」、Forbes米国版が次なるユニコーン企業25社を選出した「NEXT BILLION-DOLLER STARTUPS」の最新版も掲載。スタートアップ・シーンの今と未来が見えてくる決定版として、内容盛りだくさんでお届けする。
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