大谷翔平のリーグMVP受賞は確実? 「史上初」「○年ぶり」金字塔多数の異次元のシーズンを振り返る
メジャーリーグで重宝される「WAR」の存在
しかし、メジャーリーグにおけるMVPは決して「打撃スタッツ」だけを参考に選出されるわけではない。大前提として「投手」も含めた所属選手全員が対象であることに加え、野手の評価には「守備」や「走塁」での貢献度も大きく加味される傾向が日本のプロ野球よりも強いと言っていいだろう。 しかし、「投球」「打撃」「守備」「走塁」という野球における各プレーはその性質自体が異なっており、一概に比較できない。例えば、「シーズン10勝と30本塁打はどちらの価値が上か」「シーズン3割と40盗塁はどちらがチームへの貢献度が高いか」と問われても、それを明確な理由とともに答えられる人間など、いないのではないだろうか。 そんな中、近年のメジャーリーグにおけるMVP選出でもっとも「重宝」されている指標がある。それが「WAR」だ。WARとは、前述した野球におけるあらゆるプレーを総合的に評価し、「代替可能な選手と比較してチームにどれだけ勝利数を上積みしたか」を示す。ちなみに、ここで言う「代替可能な選手」とは平均以下の実力で容易に獲得できる選手=マイナーから昇格させたり、ウェーバー経由で獲得できる控え選手のレベルを指している。 とはいえ、このWAR。実はメジャーリーグでも公式に算出方法が定められているわけではなく、2024年時点では算出方法が違う複数の「WAR」が存在する。その中でも有名なのが「FanGraphs」が算出する通称fWARと、「Baseball Reference」が算出する通称rWARの2つだ。WARの出現により、異なるポジション、異なるプレースタイルの選手を「同じ基準」で評価できることになり、近年はこれがMVP投票の結果にも大きく影響している。
DH専任でのWAR9.2という数字は…
では、2024年、大谷が残したWARをMVP最終候補となったほか2選手と比較してみよう。 大谷翔平fWAR 9.1/rWAR 9.2 リンドーアfWAR 7.8/rWAR 7.0 マルテfWAR 6.3/rWAR 6.8 ちなみにrWARは「攻撃(打撃+走塁など)」「守備」など細かな内訳も公表されており、大谷の場合、守備の評価は-1.7。当然と言えば当然だが、今季は全試合に指名打者=DHとして出場し、一度も守備についていないため、守備での貢献度はゼロ。したがって数値はマイナスになってしまう。一方、リンドーアとマルテは二遊間を守る選手で守備貢献度も高く、リンドーアは1.2、マルテは1.3をマークしている。 ここで明らかになるのは、DH専任の大谷は「守備指標」においてかなりのマイナスをこうむりながら、「総合数値」ではリーグ断トツのWARをマークしているということだ。ちなみに、DH専任でのWAR9.2という数字は、それ自体が破格と言っていい。メジャー全体で見渡しても、大谷のWARを上回っているのは圧倒的な打撃スタッツを残したジャッジと、遊撃手として守備貢献度も高く、今季は首位打者&トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)をマークしたボビー・ウィット・ジュニア(カンザスシティ・ロイヤルズ)の2選手しかいない。なおウィット・ジュニアもア・リーグの選手だ。