ソフトバンク系のPayPayアセットが突然の”幕引き”、運用会社の事業終了で投信はこうなる
もちろん、機関投資家や金融法人から多額の資金の運用を委託されているような運用会社なら、個人向け投資信託の運用資金が小さくても経営を継続できる。が、個人向け投資信託の運用しか行っておらず、その資金も小さい運用会社は、経営面で厳しい状況に追い込まれるリスクも残る。いくら長期投資を標榜する運用会社でも、自らの経営の持続性が担保されなければ、それは絵に描いた餅でしかない。 こと近年においては、信託報酬率の引き下げ競争が激しく、かつてのように運用会社が年1.5%もの信託報酬を取ることはできない。インデックスファンドの信託報酬に至っては、年0.1%を切るものが大半で、アクティブファンドですら年1%未満なのだ。
例えば、運用会社が得る信託報酬率が年0.5%で、運用資産が50億円だとすると、年間の売上高はわずか2500万円。従業員数にもよるものの、オフィスの賃借料や各種システムにかかる費用などを考慮すると、完全な赤字だろう。 このような運用会社が設定・運用するファンドを買ってはいけない。長期投資をするつもりで買ったとしても、赤字続きの運用会社は、経営の持続性に難があるし、そもそも黒字化できないような運用会社が、投資先企業を選別して投資するなど”噴飯もの”だ。
■運用会社の財務情報も忘れずに見よ 実際、個人向けに投資信託を設定・運用している運用会社は、自社のホームページで財務情報を開示している。「正会員の財務状況等に関する届出書」がそれだ。また運用会社の純資産総額に関しては、「投信資料館」というサイトが定期的に公表している。投資信託を保有している人は一度、チェックしておくとよい。 今はまさに総選挙の真っ最中だが、石破茂新政権は前政権からの「資産運用立国」の方針を引き継いだ。新内閣発足の矢先、資産運用会社が事業終了を決めるとなると、政府方針の達成もいささか危うくなってくる。
鈴木 雅光 :JOYnt 代表、金融ジャーナリスト/大野 和幸 :東洋経済 記者