獲った量と池に入れた量が違う? シラスウナギをめぐる不可解な実態
水産庁データによれば、平成28年(27年11月ー28年5月)のシラスウナギの国内漁獲量は13.6トン。この数値は、養殖業者の池に入ったシラスウナギのうち、輸入した分をのぞいた量を示している。一方、シラスウナギ漁が行われている都府県ごとの採捕報告数量の同年漁期(27年11月ー28年5月)の合計は7.7トン。養殖池に入ったシラスウナギの数と、とったシラスウナギの数に6トンもの差が生じている。この差はいったいどこからくるのだろうか? ウナギ完全養殖の実験成功から6年、いまだ市場に出回らない理由とは
海岸近くの宅地や農地が混在する地域の、とある民家に土曜日だというのに早朝から軽トラックなどで乗り付けた男たちが次々と入っていく。手にはバケツや発泡スチロールの箱を大事そうに抱えている。民家はシラスウナギの指定集荷人の家。男たちはシラスウナギの採捕者だ。民家敷地の小屋の中で、男たちがとったシラスウナギを集荷人が計量し、その場で現金化する。 ひと晩の漁で10万円もの現金を得て満足そうに帰っていく採捕者もいれば、1週間かけて1万円しかならず憮然とした表情の採捕者もいて悲喜こもごも。集荷人のもとに集まったシラスウナギは、集荷人から流通業者などを経て個々の養殖業者にわたり、養殖業者の池に入って養殖される。
国内で採捕されるシラスウナギは、東アジアに広く分布するニホンウナギの稚魚だ。ニホンウナギは、2014年に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に分類された。ウナギを利用する日本と中国、韓国、台湾は同年9月、ウナギの国際的自然保護・管理に係る非公式協業の場で共同声明を発表し管理強化に乗り出している。 同年10月にはウナギ養殖業者を農林水産大臣の届出制とし、シラスウナギの池入り数について国への報告を義務付けした。さらに2015年6月からは、ウナギ養殖業者を農林水産大臣の許可が必要な指定養殖業に指定している。 一方、シラスウナギ漁は対象都府県の許可制で、許可証を得ている者のみが漁を行うことができる。都府県がシラスウナギ漁を、国がウナギ養殖業者を管理しているのだ。そうした中、都府県のシラスウナギ採捕量の合計とウナギ養殖業者の池に入ったシラスウナギ量の合計に大幅な差が出る事態が生じている。