年齢を理由に自分の可能性を狭めてはいけない…「急激に衰えてしまう人」に何が起きているのか
病気になった時もこのような考え方ができると、そこから先の生き方が変わってくるのではないでしょうか。 もちろん、病気の治癒を目指すのは大切なことです。ここで指しているのは、それが難しい場合についてです。仮に快復の見込みが持ちづらい病になったときは、その病気があることを前提としたうえで、どうやってその先の人生を前向きに歩んでいくのかを考えることが大切なのだと思います。 闘病ではなく、ともに生きる「共病」の精神を持ち、病気を手なずけながら生きていく……シニアに求められるのは、そんな穏やかな精神なのではないでしょうか。
■「今あるものに目を向ける」 その具体的な方法が、「今あるものに目を向ける」ということだと思います。まだ自分ができること、残っている能力に目を向け、大切にしながら生きるのです。 たとえ寝たきりになったとしても、詩や絵画の創作に意欲を燃やすなどして、「今できること」を最大限に生かしている方はたくさんいます。 パラリンピックの選手たちは、多くの競技において、健常者をはるかに凌駕する能力を見せます。持っている能力を最大まで高め、その突出したレベルで世界を相手に戦っているのです。これは、「できること」を極限まで伸ばした例と言えるでしょう。
「できないこと」が生まれたときは、代わりに「できること」をどこまで伸ばせるか、新たな挑戦が始まっているのではないでしょうか。
和田 秀樹 :精神科医