年齢を理由に自分の可能性を狭めてはいけない…「急激に衰えてしまう人」に何が起きているのか
マイナス思考は、脳、心、体の老化を促進させてしまいます。老化しないように努力することはとても大切ですが、老いたら老いたなりに生きていくというスタンスもまた重要です。その発想を持てないと、シニア時代を心豊かに生きることは困難になります。 老いを感じたときこそ、それ自体は仕方のないことと潔く諦め、「ではそのうえで、どうやってこれからの人生を幸福に生きられるか」ということへの挑戦心を持つようにしてください。そのような姿勢は、この世代の方々が備えるべき、前向きに生きるための最上の知恵だと思います。
■「病気とともに生きる」という意識が精神を安定させる 前項目の「老いを受け入れる」にも通じることですが、病気に関しても、「なったらなったなりに生きていく」という精神を持つことが、老年期を心豊かに過ごすための極意なのだと思います。 人は必ず老いるものですし、老いるということは病気になるということです。ある程度の年齢になれば、何かしらの疾患を抱えていない人はほぼいないのです。 病気をはねのけるような生き方は、ある時期まではもちろん大切ですし、効果を発揮するでしょう。けれど、では病気になったら人生が終わりなのかというと、そんなことは決してありません。
病気を忌まわしいものととらえ、そこから目を背けるのではなく、「ともに生きる」とwithの精神で生きていく。病気であることを受け入れたうえで、どうすれば幸せになれるのかを探究するほうが、ずっと建設的だと思います。 精神科医の森田正馬さんが提唱した「森田療法」というものがあります。 これは、不安を取り除こうとするのではなく、不安を抱えたままどう生きるかという考え方が特徴の心の治療法です。つまり、変えられることについては悩み、変えられないことについては受け入れるということです。
たとえば、「自分は赤面症だから人から好かれない」という悩みを抱える患者さんがいたとします。 そのときに、森田療法ではその人の「顔が赤くなること」自体を変えようとはしません。赤面症であることを受容したうえで、人から好かれるための方法を考えるというアプローチをとるのです。 たとえば、もっとにこやかな表情を浮かべたり、話し方を変えたり、あるいは「尊敬している人の前では顔が赤くなっちゃうんです」とあらかじめ相手に伝えたりする、などといったアドバイスをします。