どんな逆境も乗り越える精神力 巨人5位・153キロ左腕の宮原駿介が大学で成長した理由
人が最も嫌がる仕事
巨人から5位指名を受けた東海大静岡キャンパスの153キロ左腕・宮原駿介(4年・静岡学園高)。11月30日に行われたジャイアンツファンフェスタの新入団選手発表にて、背番号57のユニフォームを初めて披露した。 【選手データ】宮原駿介 プロフィール・寸評 先発、抑え。チームからの要望に全力でこたえるべく、現在もトレーニングを重ねている。来年1月の新人合同自主トレからアピールし、1年目から結果にこだわっていくつもりだ。 厳しい競争の世界に身を置くことになるわけだが、宮原には芯の強さがある。どんな逆境にも、乗り越えていくだけの精神力。高い技術も大事だが、最終的には気持ち次第なのだ。 宮原は東海地区大学野球連盟の静岡学生野球リーグの投手として、初の支配下指名である。23年12月、24年6月と侍ジャパン大学代表候補合宿に参加。代表入りはならなかったが、ハイレベルの選手の中で、貴重な場を経験した。チームとしては4年8シーズン、全国舞台に駒を進めることはできなかった。高校時代にも目立った実績はない。大学でなぜ、プロから評価を受ける存在に成長を遂げたのか。 ちょうど1年前、東海大静岡キャンパス・手塚慎太郎監督は、活動拠点・松前球場のトイレ掃除の担当に命じた。指揮官は明大OB。かつて明大を計37年率いた島岡吉郎元監督の「人間力野球」の教えに触れてきた。最上級生が合宿所のトイレ掃除を担うのが伝統。便器を素手で磨いたという逸話も残っている。 手塚監督は、宮原にチームを背負う覚悟と責任を持たせるため、人が最も嫌がる仕事を任せたのだ。宮原は手塚監督が指導する意図を深く理解し1年間、任務をまっとうした。グラウンドに訪れた関係者は、こう明かす。 「入った瞬間、驚きました。床も含めてピカピカでした。やらされているものではなく、自発的でないと、あそこまで清潔感を保つことはできません。トイレを使う人の立場に立ち、気持ち良く使用してもらいたいと、魂を込めて向き合っていたことが想像されます」 まさしく、ルーティン。心を落ち着かせてから、日々の練習に入っていた。野球の神様は、どこかで見ている。地道な取り組みをコツコツ。宮原の真摯な取り組みが結果的に、野球選手としてのパフォーマンス力アップにつながったことは、説明するまでもない。 人のために汗を流せる人物には、想像力と思いやりがある。野球は、相手があって初めて成立する競技。18.44メートル先にいる打者と勝負する宮原には、相手を見る目がある。ときにマウンドは孤独であるが、心を鍛錬した宮原に怖いものはない。巨人投手陣の最重要ピースの一つとして、重宝されるはずだ。 写真=岡本朋祐
週刊ベースボール