高齢者ばかりで外国人客を「おもてなし」できず…全国の半数近くの市町村は消滅危機で「観光消滅」という末路
■成功例は大分県にあった! 特に地方の観光地の人口減に対する懸念がある中、そうした問題をクリアしている自治体もある。例えば、大分県別府市は立命館アジア太平洋大学(APU)との連携で成功を収めている。 同大キャンパスは、大分県別府市の標高約330メートルの山間部に位置し、自然豊かな環境に囲まれ、別府市街や別府湾の絶景を一望できる。学生の約半数は外国人で占められ、サステイナビリティ観光学部(ST)などで学んでいる。彼らの多くは別府のホテルや飲食店でアルバイトやインターンとして働き、卒業後にそのまま県内の観光業に就職するケースも多い。 先日、筆者は別府の温泉経営者から、「APUの学生さんたちが温泉で働いてくれるおかげで、別府がなんとか成り立っている」と聞いた。 APUサステイナビリティ観光学部のダハラン・ナリマン准教授によると、APUは多くの自治体や民間企業と連携協定を結んでおり、教員も観光業振興委員などを通して政策づくりに提言しているそうだ。 また、学生たちは、国内外のフィールドスタディや地域の問題解決に向けてのグループワークを行い、その成果発表会を自治体と企業に共有しているという。 ほかにも、地元企業との製品共同開発、県内の観光ルート作成、ソーシャルメディアによる観光スポット紹介、温泉まつりに国際的な雰囲気を盛り込むなど、学生と教員がグローバルな知見を活かした施策を自治体と共同で展開しているのだ。 多文化のバックグラウンドをもつ国際学生に観光学を研究してもらい、卒業後は日本の観光を一緒に育ててもらう。外国人の学生にとっても自国より政治的・経済的に安定した生活が日本で築けるのなら、メリットがある。彼らの存在は労働力を補うだけでなく、日本のグローバル化を支え助けるのだ。 別府は、中国、台湾と朝鮮半島に近く、日本一の温泉数を誇るという立地に恵まれているが、持続可能な観光コミュニティをAPUと大分県は構築しているのである。他の自治体のお手本になりそうだが、別府にも問題がないわけではない。「インフラ」が課題なのだ。「大分県のような地方では交通が不便で一つのスポットから次のスポットまで距離が遠く、交通インフラが整備されていないエリアもある」(ナリマン准教授)