高齢者ばかりで外国人客を「おもてなし」できず…全国の半数近くの市町村は消滅危機で「観光消滅」という末路
■課題2:経済変動とインフレ 米中貿易摩擦、中国からのデカップリングはサプライチェーンの分断を引き起こし、観光関連商品の価格を上昇させるかもしれない。とりわけ、訪日客が多い順に韓国人、中国人、台湾人、米国人、香港人となっており、これらの地域の経済変動やインフレは日本のインバウンドに影響するだろう。 また、円安による訪日旅行の価格競争力は強みだが、インフレによる輸入コスト増加が旅行会社の利益を圧迫する。国内でも物価上昇が旅行費用全体を押し上げ、価格競争力の低下が懸念されている。 ■課題3:異常気象 日本には異常気象による天災リスクが年間を通じてある。台風の大型化と頻発化、集中豪雨と洪水、猛暑と熱波、そして雪不足が近年顕著化。これらは観光業に打撃を与える。 『観光消滅~観光立国の実像と虚像~』(中公新書ラクレ)は、観光学の第一人者で城西国際大学観光学部の佐滝剛弘教授が、豊富な事例をもとに改めて日本の観光の意義と未来を問い直す書籍だ。 本書によると、2024年2月に暖冬で氷像が溶けてしまい、北海道の「千歳・支笏湖氷濤まつり」が初めて会期途中で中止となったそうだ。また、2023年には雪不足で北海道や長野のスキー場の営業開始が遅れる事態も発生した。桜の開花時期の変化も花見の集客に影響を与えているという。 さらに、気候変動は地域の特産品や食文化にも影響を及ぼす。観光地の魅力の一部である食文化の危機は、観光業全体の活力を失わせるかもしれない。 このように観光産業は、地政学的、経済的、気候変動的リスクに大きく作用するが、ほかにも日本が直面している問題がある。それは、深刻な人手不足だ。 ■課題4:地方消滅=観光消滅⁉ 2024年4月に『人口戦略会議』が発表した「令和6年・地方自治体『持続可能性』分析レポート」は、全自治体の4割超にあたる744の自治体が、少子高齢化により「消滅可能性自治体」にあたるという。 前出・佐滝教授はこの消滅可能性自治体に多くの観光地を見つけたという。「『地方消滅』はイコール『観光消滅』であるともいえそうな、冷酷な数字である」。 訪日客を中心にフードツアーを展開している「Arigato Japan Food Tours」の創始者兼CEOのアン・カイルさんは、「日本の旅行業界は深刻な労働力不足に直面しており、ホテル、レストラン、交通機関、さらには現地ツアーガイドにまで影響している。労働力不足は、コストの増加やサービスの低下につながる可能性もある」と警鐘を鳴らす。 最近、都内でも人手不足により、デパートや飲食店で長時間待たされること多々がある。日本の「おもてなし」が今や絵に描いた餅に陥っているような気がするのは、筆者だけだろうか。