あなたも直木賞作家? 物語のあらすじが作れる小説創作支援ソフトが進化
THE PAGE
芥川賞・直木賞が話題になるなか、「小説を書いてみたい、だけど、何からどう書けばいいのかわからない」と悩む人には期待のソフトになるだろう。芝浦工業大学情報工学科の米村俊一教授は2015年12月、同大卒の作家・中村航氏とともに、初心者でも簡単にあらすじを作れる小説創作支援ソフトを開発した。2014年に発表したソフトの改訂版である今回の新ソフトは、一体どこが進化したのだろうか。
大学OBの小説家・中村航氏との共同研究
「一般の人の小説づくりを手助けすることで、すそ野を広げたいと思っています」と語る米村教授は、人間の認知活動について研究する認知心理学が専門。2012年に開始した小説創作支援ソフトの共同研究は、コミュニケーション研究の一環と位置付ける。 中村氏ら作家の思考パターンなどをもとに、2014年には最初の小説創作支援ソフトを開発。「物語が動き出すきっかけを記述してください」といった質問への回答を記入することで小説のあらすじを作れるというものだったが、経験豊富なプロには簡単に使えても、初心者には難易度が高いという課題があった。 試しに学生にソフトを操作させたところ、何を書けばいいのかわからずなかなか書き出せなかったり、逆に内容を整理できず大量に書き込んでしまう。確かに、素人にいきなり「きっかけ」は何かと質問しても、なかなかすぐには答えられないだろう。アイデアも表現力も乏しいのだから。 そこで、今回発表した改訂版では、一から文章を書くのではなく、話の展開やあらすじの文章をあらかじめソフト側で用意した。 まず、物語の典型的な展開を、起承転結の流れに沿って13に分類し、それぞれを短い文にまとめた。これら13の短文を最初から順番につなげれば、整った展開のストーリーがたやすく作れる。 それぞれの短文の文節は、複数の例文から好みのものを選べるようになっている。たとえば、最初の短文が「東京に住む高校生である気の弱い主人公は自信がなかった」と表示されていた場合、一番目の文節である「東京に住む」は、他にも「大阪に住む」など別の例文を選択し直せる。各文節の例文は平均で10個用意しており、全短文の全文節で好みの文例を組み合わせることで、さまざまなバリエーションのあらすじを作ることが可能だ。 文節の変更ウインドウと短文の表示ウインドウは同じ画面に表示されているので、あらすじ全体の流れと、例文の変更内容を交互に確認しながら、作業を進めることができる。