センバツ2022 天理監督育む、強さの秘訣 「自主性」が上達のコツ 自ら練習考え、効果実感 /奈良
18日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)に出場する天理は、今大会の出場校中最多となる26回の選出を誇る。その強さの秘訣(ひけつ)は、中村良二監督が育み、選手たちに根付いた「自主性」にありそうだ。【吉川雄飛】 野球部が練習に励む天理市の天理親里競技場。複数のコーチがグラウンドで選手の指導に当たる中、中村監督は球場内のスタッフルームにいることが多い。選手が自らの課題を主体的に考えることが「上達のコツ」であり、「全てを教える指導は成長につながりにくい」との考えからだ。「技術的なアドバイスは、選手が自分から聞いてこない限り、ほとんどしない」と笑う。 あえて選手に近づきすぎないスタイルは、高校時代に自らが指導を受けた故橋本武徳監督(当時)に学んだ。中村監督の現役時代は「やりたい練習があれば教えてほしい」との橋本さんの問いかけに、選手たちが練習メニューを考え、実践するのが日常だった。足腰の強化にタグラグビーを取り入れるなど、いっぷう変わった練習も採用されたという。 こうした練習が奏功し、中村監督が主将としてチームを率いた1986年夏の甲子園で、天理は日本一に輝く。自主的に取り組む練習の効果を実感した3年間の経験が「自分の原点になっている」と中村監督は語る。 自主性を重んじるチームカラーは、試合中の戦いぶりにも現れる。中村監督は試合中、攻守の判断を選手に委ね、バントなどのサインをほとんど出さない。昨秋の公式戦8試合で天理がバントを決めたのは2回だった。1点を小刻みに重ねるのではなく、持ち前の打力を生かして一気に大量得点を狙うのが今チーム流なのだ。「つなぎの打順」でバントを期待されることが多い2番を主に担った大城志琉(しりゅう)選手(3年)は「バントより打って好機を広げる方が自分には合っていると思った」と振り返る。 守備にも選手の創意工夫が生きている。昨秋の近畿地区大会では、外野手が相手打者の特徴に合わせて守備位置を調整。右方向への打球が多い打者に対しては極力右に寄るなど、大胆なシフトで抜けそうな当たりを好捕する場面が目立った。これも外野手らが事前に調べたデータを基に自分たちで判断、ベンチからは何も指示していないという。左翼を担った永井大飛(やまと)選手(3年)は「位置を変えなければ取れなかった打球も多かった。策がはまったと思う」と胸を張る。 星稜(石川)との初戦を前に、中村監督は「甲子園で選手たちがどう考え、どうプレーするか楽しみだ」と期待を込めた。