結局「ポピュリズム」とは何なのか...世界中が「極端な政党」に熱狂する理由
近年、特に西欧で右派ポピュリズム政党が支持を集めているが、これもまた「民主主義のあるべき姿」の1つなのか──
2024年6月の欧州議会選挙では右派ポピュリズム政党が大躍進。世界中で反グローバル・反移民の流れが加速する背景には何があるのか。 【動画】「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街中を引き回す...悲惨な動画に怒りの声が殺到 外務省時代から今まで世界97カ国でさまざまな国の人とビジネスや交流を行ってきた山中俊之氏が、世界の “政党” を切り口に解説する『教養としての世界の政党』 (かんき出版)より、一部を抜粋・紹介する(本記事は第3回)。
人は曖昧な状態に長く耐えられない
経済不振で混沌とした世の中では、極端な政党が誕生しがちです。なぜなら、極端なことは「わかりやすいから」「人々の不満を吸収しやすいから」。これは現在、世界で吹き荒れているポピュリズム(大衆迎合)とも密接に関係します。ポピュリズムについては後述します。 たとえば、くつろいでいる午後8時、夕飯中にいきなり停電したとします。延々と暗いまま、ネットもテレビも繋がらず、電話回線もアウト。何ひとつ情報もなかったらどうでしょう? 「ダメージ+先行き不透明」という状況は、パニックが起こりかねないほど、人を不安にさせます。曖昧な状態に長く耐えられるタフな精神力の持ち主は、そう多くありません。 逆にいうと、たとえ悪い知らせであっても現状がわかればホッとします。スマホに「大きな地震を感知したため、安全状況を確認しております」と自治体から通知が来たら、とりあえず落ち着けるのです。
仮想敵をつくり出し、大衆にアピールする
極端な主張をする政党の中には、白か黒かに単純化したわかりやすい主張を大声で述べ、仮想敵を「悪いのは○○だ!」とつくり出し、自分たちの権利を守ろうとするケースも珍しくない......。すると、大衆に好かれるポピュリズムの評価が上がります。 詳細は述べませんが、このようにナチスが政権を握り、ヒトラーという稀代のカリスマがドイツのトップに立ったことで、世界は大きなうねりに巻き込まれていきます。 歴史にifはありませんが、ヒトラーが生まれた背景には、政権をめぐる政党間や政治家同士の激しい戦いがあり、国民の支持を集めて右派ポピュリズム政党が勝ち残った、という出来事があります。 もしも当時、ドイツの共産党にカリスマがいたら、今日のEUはなかったでしょうし、もしも同じ右派でも右派ポピュリズムではなく中道の右派政党が政権を握ったら、ドイツの、いや世界の歴史は変わっていたでしょう。もちろん、それら政治家を支持する人々、生み出す社会的背景があることが前提ですが。 「どんな政治的理念をもつ政党が政権を手にするか?」 つまり政党とは、その国のありようも世界の歴史も変える、大きな影響力を持っています。