結局「ポピュリズム」とは何なのか...世界中が「極端な政党」に熱狂する理由
移民が西欧を右傾化させる?
「それでも右派ポピュリズム政党が台頭している」 これは西ヨーロッパ、そして世界のホットなテーマです。ポピュリズム(大衆迎合型)とも言える政党が世界中で急激に影響力を増しているさまは、エコノミスト、ガーディアンやル・モンド、ニューヨーク・タイムズやワシントンポストなどで盛んに報道されています。 2024年6月の欧州議会選挙では、右派ポピュリズムの「アイデンティティと民主主義」と「欧州保守改革」が議席を伸ばしました。 ポピュリズムには、「現状に不満を持つ大衆vs.既得権のある富裕層」という対立構造があり、左派にも右派にも見られます。 「改革を目指す政治家が、庶民の代弁者として既存の権力体制や既得権益を攻撃する政治手法」というのが、一般的な政治学の定義です。 ポピュリストは物事を単純化して “仮想敵” をつくるなど、大衆ウケするわかりやすい論理で人々を魅了し、熱狂させ、扇動するのが大得意。 ヒトラーはポピュリズム政治の天才でしたし、これまでポピュリストが政権を取ることも多いと言われてきたラテンアメリカ諸国で盛んに用いられていました。 今、世界で盛り上がるポピュリズムは、従来の「大衆vs.既得権のある富裕層」に加えて、「大衆vs.移民」の対立構造です。 大衆はエリートや富裕層を憎んでいますが、「グローバル経済で格差が拡大したのも、自分の職が奪われるのも、全部移民のせいだ」とわかりやすい敵に飛びつき、排外的になっています。 それが「国の伝統と誇りを取り戻そう。グローバルとかもういらない。移民を追い出して、昔ながらの国になろう」という右派ポピュリズムの主張と結びついてしまいました。 さらに、国際機関に対する懐疑的な姿勢も顕著です。西欧では、反EUという形で多くの国民の支持を集めています。右派ポピュリズムに位置づけられるトランプ氏は、NATOからの脱退すら主張しそうです。 冷戦期の右派、たとえばサッチャー英首相(在任期間、1979年~1990年)やレーガン米大統領(任期、1981年~1989年)が、国際機関に協力的であったこととは対照的です。 また、LGBTQの権利保護にも後ろ向きである点も、特徴として挙げておいてよいでしょう。