元関脇・寺尾の錣山親方が患っていた「うっ血性心不全」の症状・原因とは? 医師が解説
うっ血性心不全の症状
編集部: うっ血性心不全になるとどのような症状が現れますか? 甲斐沼先生: うっ血性心不全になると以下のような症状が現れます。 ・息切れ(呼吸困難) ・咳 ・動悸 ・食欲不振 ・胸の痛み ・手足のむくみ、冷感 ・体重増加 ・倦怠感 心不全の初期の段階では、夜間にトイレに起きるようになります。これは、日中に四肢で滞留していた血液が、横になって休むことで心臓に戻る循環血液量が増加して腎血流が増えるためです。 心不全が進行して重症化すると、就寝時にも息苦しさを感じます。また上半身を起こすと呼吸が楽になる「起坐呼吸」の症状が現れることもあるでしょう。この頃には、激しい咳やピンク色の痰、胸の痛みがでることもあり、狭心症かもしれないと受診する患者さんもいます。
うっ血性心不全の原因となる代表的な病気
編集部: うっ血性心不全の原因となる病気を教えてください。 甲斐沼先生: うっ血性心不全の原因となる病気は、虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈、そしてそのほかの病気です。 編集部: 虚血性心疾患とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 虚血性心疾患は心不全の原因の多くを占める病気です。心臓の筋肉に栄養を与えている冠動脈が動脈硬化により狭窄・閉塞することで、血液が行きわたらなくなり十分な収縮・弛緩ができなくなります。 動脈硬化を引き起こす原因は、糖尿病や高血圧、肥満、脂質異常症などです。これらは、動脈を硬くしたり、動脈の内側にコレステロールの塊であるプラークを作ったりします。虚血性心疾患の代表的な病気は狭心症や心筋梗塞です。 編集部: 高血圧とはどのような状態ですか? 甲斐沼先生: 高血圧とは、血圧が基準値を上回っている状態を指します。高血圧の診察室での基準値は以下のとおりです。 〇診察室血圧 ・収縮期血圧:140mmHg以上 ・拡張期血圧:90mmHg以上 血圧が高くなると、心臓や血管に大きな負担をかけてしまいます。高血圧になると初めは心肥大が起こりますが、進行すると心臓全体が硬くなり心不全に至ります。 編集部: 心臓弁膜症とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 心臓弁膜症とは、何らかの原因で心臓の弁の開閉機能に障害が起こる病気です。うまく開かなくなると全身に血液が流れにくくなり、閉鎖不全になると血液が逆流します。原因は加齢や先天性の病気、感染症などです。いずれも進行すると、心不全を引き起こします。 編集部: 心筋症とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 心筋症とは、心臓の筋肉に異常が起こり、心臓のポンプ機能が阻害される病気です。原因はウイルス感染やアルコールの過剰摂取、コカインや抗がん剤などの薬物で、これらの原因により、心臓の筋細胞が破壊されると心不全を引き起こします。 明らかな原因が不明な場合は、特発性心筋症として区別します。 編集部: 心筋炎とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。原因の多くはウイルス感染で、心臓の筋肉が障害されると機能不全を起こし心不全となります。 編集部: 先天性心疾患とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 先天性心疾患とは生まれつき心臓の構造に障害がある病気です。心臓の壁や、弁膜などが生まれつき正常ではないため、心臓に負担がかかり重症であれば心不全を引き起こします。 編集部: 不整脈とはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 不整脈とは、心臓の拍動が速かったり遅かったり、リズムが不規則になったりする病気です。不整脈のうち、脈が速くなる頻脈が持続すると、心筋が常に活発に働きます。すると、やがて心臓は疲れてしまい、心不全を引き起こします。 編集部: そのほかの病気にはどのようなものがありますか? 甲斐沼先生: 糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、重度の貧血、肺気腫、甲状腺機能亢進症、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシスなどの病気も進行すると心不全を引き起こします。また、抗不整脈薬やβ遮断薬、抗がん剤などの薬もうっ血性心不全を引き起こすことがあります。