パリは最もサステナブルな五輪を開催できるのか? 地球規模のスポーツイベントを再考する
会場の95%は既存の建物を利用
今回のパリ大会は、これまでのどのオリンピックよりも街の宣伝になるだろう。エッフェル塔はビーチバレーやブラインドサッカーの会場になり、コンコルド広場は野外アリーナとしてスケートボードの会場に。ベルサイユ宮殿は、馬場馬術の舞台となる。開会式はセーヌ川で行われ、推定1万人の選手を乗せた約100隻のボートが巡航することとなる(※2)。 過去に1900年と1924年のオリンピック、1998年のワールドカップを開催したパリには、必要な施設がほとんど揃っていた。そのため、今回のパリ大会では廃棄物を出さないために、リオデジャネイロ、ロンドン、東京のオリンピックのような大規模な建設プロジェクトを避けた。 オリンピックは、開催都市がインフラ整備や都市再開発プロジェクトを迅速に進めるための手段であるということはよく言われるが、パリ大会では使用される施設の95%を既存の会場または一時的な仮設インフラでまかなうことを約束した。パリ大会で競技が行われる35のスタジアムのうち、新しく建設されたのは水泳センターとバドミントンおよび新体操用のアリーナの2つだけだ。パリ市は予算のほとんどを既存施設のアップグレードに使い、1924年オリンピックに使われた古い施設が市内各地で改修された。 【水泳競技はセーヌ川で開催?パリ市長の大躍進】 こうした既存の建物を利用し、可能な限りパリ大会をカーボンニュートラルに近づけるという野望は、セーヌ川を水泳競技の会場にするという斬新なアイデアを生んだ。 パリ市長であるアンヌ・イダルゴ氏が、水泳競技をセーヌ川で実施すると宣言してからは、「あの川で泳ぐなんて不可能だ」と、市民の誰もが口にしていた。しかし、過去数年間に約15億ドルを費やした大規模な土木工事により、セーヌ川への下水と産業廃棄物の流入が停止。2024年7月17日、イダルゴ氏自らがセーヌ川で泳ぎ、市の水質改善をアピールしたことが話題となった(※3)。 パリ市は、セーヌ川をトライアスロンや10キロ水泳などのオリンピック競技に使用するだけでなく、来年から一般の水泳場としても利用することが現実となりつつあることを証明した。