”孤独な宰相”石破の頭を悩ます「八方塞がりの外交政策」USスチール問題まで手が回るはずもなく…
独自の外交政策も自由にできない
石破首相は、トランプ大統領就任後の2月に、トランプと会談する予定である。「アメリカ第一主義」を唱えるトランプは、安全保障の分野でも、経済の分野でも、国益を守るための「取引(ディール)」を繰り返すであろう。 日本製鉄のUSスチール買収計画について、バイデン大統領は中止命令を出した。トランプが、このバイデン路線を覆す可能性はあまりない。関税をはじめ、トランプが経済分野で様々な要求を繰り出してくることが予想される。 石破は、少数与党の政権を運営していかなければならない。それは内政のみならず、外交についても言いうる。政権基盤の安定していない首相が、独自の外交政策を自由に展開することはできない。トランプが石破に防衛負担の増加を求めたところで、野党の合意を得ることができなければ、それは実現しない。 石破は、アジア版NATOや核共有という構想を抱いているが、それはトランプのみならず、日本の野党からも拒否されるであろう。 韓国の政治情勢も懸念事項である。尹錫悦政権の誕生で、日韓関係は一気に好転した。そして、日米韓の連携強化は、北朝鮮やロシアや中国への抑止力を高めることに繋がった。尹錫悦政権が崩壊し、文在寅政権のような反日的な野党が政権に就けば、また日韓関係は悪化し、日米韓の安全保障協力にも亀裂が入ってしまう。 北朝鮮は、ウクライナに兵士を派遣するなど、ロシアとの関係を強化している。中国は、南シナ海への海洋進出をはじめ、軍事力を広くアジア太平洋地域に展開しようとしている。東アジアの安全保障関係は厳しくなることが予想される。 日米安全保障関係がわが国外交の基礎であることを、トランプにも日米両国民にも再認識させる説得能力が石破に求められている。
舛添 要一(国際政治学者)