片岡千之助「光る君へ」薄幸のプリンス・敦康親王に自身を重ねる 御簾越えのシーンは「会いたい」一心で
敦康親王についてはとりわけ彰子との関係が注目を浴びている。道長は、まひろに「敦康さまはお前の物語にかぶれすぎておられる」「光る君のまねなぞされては一大事である」と言い、敦康親王と彰子が不義密通に至るのではないかと危ぶむが、片岡自身はどう捉えているのか。
「彰子への気持ちを言葉にするのは難しい。彰子は彰子なんですよね。母のようでもあり、姉のようでもあり……難しいですね。きっと、男性が女性に求める甘える部分というのは母(定子)がいないからこそ、彰子に向けていたんじゃないかと思います」
とりわけ、敦康親王が御簾を越えて彰子の顔を見るという大胆な行為が反響を呼んだが、片岡は敦康親王の心境をこう解釈する。
「僕自身も台本を読んだときにびっくりしました。ご覧になった方の中には『源氏物語』を重ねる方もいると思いますし、あの場にいたまひろや行成(渡辺大知)も“え!”と驚いていましたが、敦康親王からすれば“ただお顔が見たかっただけなんです”と、その一心だったと思います。ずっと一緒に生きてきて、誰よりも信頼していて、愛している人に御簾越しに会わなければいけない現実を突きつけられたら哀しいですよね。元服して離れてしまったことの辛さもあったと思いますし。友達、異性であろうが、大事な人の顔を見たいっていう気持ち。顔を見て、ようやくホッとする。本当に純粋な気持ちだったと思いますし、僕は大石(静)先生が書かれたセリフをストレートにやらせていただこうと思っていました」
その敦康親王が、24日放送・第45回「はばたき」で、21歳の若さでこの世を去る。短い生涯だったが、片岡は3歳の娘の成長を見守ることの出来ない悔しさはありながらも、見違えるようにたくましく成長し国母となった彰子の姿を見て「いいタイミングで逝ったのではないか」とも。そんな敦康親王の想いに、片岡は亡き祖母の姿が重なったという。
「今年の2月に母方の祖母を亡くしまして。ずっと元気だったのですが、亡くなる1週間前に僕が初めて映画の主演をやらせていただいた『橋ものがたり「約束」』の完成披露を観にきてくれて。終わって家族で食事をしているときに“正博、とにかく安心した”と言ってくれたのですが、その4日後に亡くなってしまったんです。母には“正博の晴れ姿を見て安堵したのかも……”と言われて、僕としてはそんな気持ちに通ずる部分があったんですよね。僕には娘もいないですし、敦康がどのようにして亡くなったのかというのは分からないですけど、この作品で描かれた、ほっとして亡くなるという気持ちに実際にあったことと重なる部分がありました」
大学生として、歌舞伎俳優として、多忙な日々を送る片岡は「仕事が入ると私生活はきれいにはまとまらないんですよね。意識がそっちに行っていますから、逆に仕事をしているときの方が落ち着くというか」と仕事にのめり込むタイプのようで、「不器用なんですかね……」と24歳の素顔を覗かせた。(編集部・石井百合子)