片岡千之助「光る君へ」薄幸のプリンス・敦康親王に自身を重ねる 御簾越えのシーンは「会いたい」一心で
劇中、敦康親王は東宮になることを周囲に期待されながらも叶わず、姉の脩子内親王(海津雪乃)やききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)が嘆く中、「父上を見ておったら、帝というお立場のつらさがよくわかった。穏やかに生きていくのも悪くない」と静かに運命を受け入れる。片岡自身、家業を継ぐ立場にあり、敦康親王の重圧や失望は理解できたと語る。
「僕も周りの期待を背負う立場なので、東宮になれなかった敦康親王の心境は少なからず理解できたように思います。家系図的に“彼がこの家をしょっていくんだな”といったことは言われますし、そういった部分を重く受け止めて生活しているわけではないものの“家を継がなければ、継承しなければ”という思いはずっと頭の裏側にあって、生きていく上での一つの指針になっています。敦康親王は実際には継げなかったわけですけど、今の時代、いつ何が起きてもおかしくないので、“こういうこともあるんだな”と自然に思いました。ですから、そうした気持ちの持っていき方というか、心の整理の仕方は意外とスムーズだったかもしれません。彼は“穏やかに生きていくのも悪くない”とは言っているけれども、きっと“天皇って何なんだろう、何が大変なんだろう”と常に意識して生きてきたはずなので、継げなかった悔しさはあると思います。自分がもしそうなったらと思うと、やるせない気持ちになります」
物語の舞台である平安時代といえば、片岡は歌舞伎の舞台「菅原伝授手習鑑」に出演。大宰府へ流された菅丞相(菅原道真)の養女・苅屋姫を演じ、そのときに感じた時代の空気は「光る君へ」でも生かされたようだ。
「“おぉ……”と感じ入ることがあって。自分が苅屋姫を演じていたときのことなども思い出しますし、平安時代の匂いというか雰囲気は、歌舞伎で得たものです。その心持というのはどこかしらあるのではないかと思います。『光る君へ』の藤壺のセットにいると僕自身なぜか落ち着くんです。ここでお昼寝したら気持ちいいだろうなって(笑)」