借金が年間売上の16倍…倒産寸前の別府温泉老舗ホテルが復活 再建に成功したワケ
しかし、その後、別府市に県外資本の新たなホテルや旅館が次々と進出してきます。2003年、近隣に福岡のビジネスホテルが進出すると、競争が激化します。 対策として、ホテルアーサーも約3000万円を投じて内装をリニューアルし、ヨーロッパ調のテイストに強化しましたが、大きな効果が出ませんでした。その後、2008年のリーマンショックで予約が激減。金融機関からの借入金は膨らみ、コロナに入る前の時点では、元本据え置きで金利だけ支払うという状況に陥っていました。そして新型コロナウイルスの感染拡大が始まります。 日名子社長: 「顧客がいなくても、従業員を抱えている以上、支払い続けなければいけません。社会保険料の滞納だとか、そんなものが重なってきて…」 ■追加融資拒否…借金が年間売上の16倍に 最大の危機は、追加の融資を金融機関に断られたことでした。経営悪化から借入金の元本だけでなく、利子も支払えない状況に陥ったのです。 日名子社長: 「今までうちがしっかり対応してこなかったことの裏返しでもあるので、決してその金融機関が悪いとは思っていません。ただ、何かと困った時には助けてくれるんじゃないかという甘い考えを持っていたところもあると思います」 当時の借金は、年間売上の16倍にも膨らんでいました。借り入れができないため、あと数か月で倒産します。倒産か、ホテルの売却か、どこか支援先を見つけるか、厳しい状況に陥っていました。この時の状況を、日名子社長の妻・敦子さんはこう振り返ります。 日名子敦子さん: 「当時はまだ、大学生2人、高校生2人の子どもがいたんです。娘たちの志望校が私立だったんですけど、いまさら国立に行けとは言えないよねって夫と話していました。夫は弱音を吐かないし、ずっと健康だったんですが、さすがにその頃は『朝起きられない』ということがありました。本当は精神的につらかったのだと思います」 倒産が刻一刻と迫る中、転機が訪れます。金融機関が日名子社長に中小企業再生協議会(現在は中小企業活性化協議会)を紹介しました。中小企業再生協議会とは、財務上の問題を抱えている中小企業の再生を支援する組織で、専門家が経営改善計画の作成や実行に携わります。この協議会を通じて、地元大分県で再生ファンドを手掛ける大分ベンチャーキャピタルが再生支援を開始しました。