「学校をやめて結婚するべき?」ある少女は問いかけた。サヘル・ローズさんが、「美しい物語」の裏にある「傷」をさらけ出した理由
「なかったことにしたい」孤児院での記憶、家族の反対を押し切って養子縁組してくれた母との出会い、来日後の困窮した暮らしといじめ、世界を旅して出会った子どもたちが語った将来の夢━。 【画像集】戦禍でも。大道芸や海水浴、サッカーや授業を楽しむガザの子どもたち。日常を守ろうとする人々の姿を振り返る 俳優であり、難民支援の活動にも取り組むサヘル・ローズさんが、自身の半生や、子どもを含めた今を生きる人たちへのメッセージをつづった新刊「これから大人になるアナタに伝えたい10のこと 自分を愛し、困難を乗りこえる力」(童心社)を出版した。 刊行を記念したイベントが12月上旬、東京都内で開かれた。登壇した著者のサヘルさんは、「世界情勢が緊迫化し、平和がどんどん遠のいている今だからこそ、私の中にある闇や孤独、世界を旅して出会った人たちのことを伝えたいと思った」と、執筆の動機を語った。
「美しい物語」の裏にあるたくさんの傷
<待っていたよ、私を見つけてくれるのを> こんな書き出しで始まる本書は、一貫してサヘルさんが読者に語りかける文調となっている。 <もしアナタが悩んだり苦しんだりしていたとしても、私はアナタの代わりに背負うことはできない。 安易に『大丈夫だよ、私も気持ちわかるよ』なんて言えないと思う。 だけど自分の弱点を、胸を張って伝えれば、誰かの心の中で救いに変わるかもしれないじゃない? だから、少しでもアナタの心が軽くなるお手伝いができれば。 そんな思いを持って今、私はアナタと向き合っている。> 前半では、7歳まで過ごしたイランの孤児院での思い出や、サヘルさんを引き取った養母との生活、来日後に困窮して公園で寝泊まりしたこと、公園生活から抜け出すために手助けしてくれた人たちの存在など、サヘルさんの子ども時代の歩みが記されている。 さらに、義父からの虐待や学校でのいじめ、母との葛藤といった過去も明かしている。 サヘルさんはイベントで、「表面上は見えないだけで、人それぞれにいろんな悩みや葛藤を抱えているんだと知ってほしいです。一見すると『美しい物語』の裏側にも、たくさんの傷や許せなかったことがある。自分の脆さや汚い部分、私自身が感じている自分の『罪』についても、今回初めて言葉にしました」と振り返った。 今回、なぜそうした過去と向き合い、本の中でオープンにしたのか。 その理由について、サヘルさんは「顔を直接合わせることができなくても、本を通して『この人もこういう経験していたんだ』『自分のような痛みを知っている人がここにもいる』と思えるだけで、心が楽になる人がいるかもしれないと考えたから」だと、涙で言葉を詰まらせながら話した。