「情報Ⅰ」の対策できてる? 来春から大学共通テストに登場 専任教員が足りず、生徒も先生も困った
2025年1月の大学入学共通テストから、「情報Ⅰ」が出題科目に加わる。過去問題がないため、受験する生徒だけでなく、指導に頭を悩ませる教員も少なくない。鹿児島県内では、受験対策の補習や教員育成など、手探りの対策が進む。 【写真】各大学の「情報Ⅰ」の扱いをまとめた一覧表
「共通テストでも必要になる基本的な知識だよ」。教員が呼びかけると、生徒たちは真剣な表情でメモを取った。10月2日、鹿児島市の武岡台高校で開かれた「情報Ⅰ」の授業。普通科の1年生が、データ通信量で用いられる単位「バイト」について学んでいた。 情報Ⅰは22年度から必修科目に採用された。個人情報の取り扱いといった情報社会の問題解決やプログラミング、データの分析・活用など四つの領域で構成する。県立高の大半は1年時に履修するため、3年時に学び直す生徒も多い。 3年生の8割が国公立大を志望する武岡台は2、3年生を対象に、デジタル教材を使った週1回の課外学習や夏季補習で個別指導を実施している。国立大を受験する3年生は「忘れている部分もあった上に過去問がなく、対応できるか不安」とこぼす。 ■ ■ 指導する教員も模索が続く。武岡台で情報科を教える横井隆弘教諭(43)は22年度に免許を取得し、情報Ⅰを担当する。「共通テスト対策はもちろん、より専門的に指導するには経験や知識が足りない」。授業研究に取り組むが、商業も教えており負担は大きい。
情報科の教員配置は全国的な課題だ。文部科学省が20年度に実施した調査によると、公立高の担当教員約5100人のうち、約1200人が正規免許を持たない他教科の教員だった。 鹿児島県教育委員会は当初、臨時免許の教員でしのいでいたが、指導態勢を強化しようと正規の免許取得を促進。22年度から情報科の教員採用を始め、23年度には公立全68校に正規免許を持つ教員を配置した。しかし、教科担当81人のうち76人は他教科を兼任。専任教員は5人にとどまる。 公立高は生徒定員に応じて教員数が決まるため、小規模校で専任の配置は難しい。県教職員課の中島靖治課長は「学校によっては他教科への配置を優先する場合もある。限られた教員数の中で適切に担当を置くのは難しい」と明かす。 ■ ■ 県教委は4月、情報Ⅰのデジタル教材を手がける「ライフイズテック」(東京)と連携協定を締結。授業で使う教材の提供や教員向けの研修を実施してもらい、現場の指導力向上を図るのが狙いだ。これまでに4回の研修を開き、教員の苦手意識が強いプログラミングやデータ分析を中心に、模擬授業などを行った。