AIに仕事を奪われそうなライターが、AI研究者にとことん聞いてみた
AIの進化に取りこぼされそうな人はどうしたらいい?
──では、ついていけていない人たちに向けて、ついていくための方法を教えてほしいです。 清田先生 :やはり歴史を学ぶのが良いと思います。すでに例としてあげましたが、自動車が登場したとき、我々の先祖はどう折り合いをつけたのか。ずっと鎖国してきた日本が、突如として、燃料を入れれば動く鉄の塊を手に入れたのです。そのとき、人々はどうやって社会に受け入れていったのか。いろいろヒントがあると思います。 人類は文明の急激な発展を何度も経験して今の生活があるのです。それについていけない人をどうするのか……、というのは政治のレベルの話になりますね。そして、それは国によってアプローチが違います。 2023年5月のG7広島サミットでの広島AIプロセスを発端に、この2年間、国際機関がAIと人間社会をどう調和させるのか議論を重ねてきています。まだ具体的な結論や方針はこれからですが、問題意識は急速に高まっています。
AIで意識は再現できるのか
──なるほど。歴史に学べ、というのはそういうことなんですね。最後に伺いたいのですが、AIで意識は作れるのですか。 清田先生 :ChatGPTの登場で明らかになったことの一つに、人間が追い求めていた「意識」の大部分が「言葉」の中にあった、というのがあります。 ChatGPTは、過去に人間がネット上に残した言葉を学習して、次の言葉を予想しているだけなのです。なのに、ユーザーは人間と会話しているような錯覚を覚えるわけです。 人間は他者の意識を確認するためにコミュニケーションを図る必要があります。一部の才能がある人は、そのコミュニケーションツールがダンスやアートかもしれませんが、ほとんどの人が言葉で自分の意識を相手に送っているはずなんです。そして、それがうまく届くと、他者に自分の意識が届いた、となる。 つまり、人間が探し求めていた「意識」は「言葉」の中にあるということになるんです。この「言葉が重要」っていうのは2年前に分かったことなんです。 『本心』では、意識にフォーカスしているのであえて身体性を持たせない描かれ方になっていると思います。身体性を持たせたら、もっと別の可能性が展開されていたはずです。それは別の機会に作品化されてほしいし、いろいろな作品を見てAIについて多くの人に考えて欲しいです。 清田さんがAI監修した『本心』は、日本人ならではの死生観に、時代の流れとAIを組み合わせたヒューマンミステリーです。AI × 死に対するルールが定まっていない今だからこそ自由な感想が出てくるはず。 映画『本心』は国内の劇場にて公開中です。 Source: 映画『本心』公式サイト
中川真知子