「不幸な事故には気を付けて」…ロシアメディアが好んで使う「裏切り者」への「ヤバすぎる常套手段」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第7回 『捕まったら最期、「絶対に有罪」…プーチンを批判したジャーナリストが受けたロシア当局の「恐ろしすぎる弾圧」』より続く
スパイの嫌疑を掛けられる
弁護士は帰った。娘を寝かせて一階に下りた。息子は自分の部屋で受験勉強をしていた。台所では2匹のゴールデンレトリバーが餌をねだっていた。母犬と6ヵ月の遊び好きなメスの子犬だ。5匹の兄弟姉妹はいろいろな国にもらわれて行った。この子犬だけ、まだもらい手を見つけられなかった。サイトを開いて、いつもの通りメーカーにドッグフードを注文しようとした。モニターに通知が出た。 「あなたのアカウントはブロックされています」 たぶん何かの間違いだろうと思った。 ワインをグラスに注ぎ、チーズを切り、ソファーに腰を下ろし、一息つこうとした。ところが携帯がひっきりなしに鳴る。友人や知り合いや外国の記者からのメッセージが立て続けに着信していた。返信する暇もなかった。元の同僚からのメッセージがスクリーンにポップアップした。 「見た? たったいま、あなたはイギリスのスパイだと言われていたわよ」 送られてきたリンクを開いた。 「今週の出来事をもうひとつ」 スクリーンには第一チャンネルの馴染みのあるスタジオと赤いワンピースの見栄えのするブロンドのニュースキャスターがあらわれた。 「月曜日の『ヴレーミャ』の生放送中に、MCの後ろに紙を広げた女性が映りました。わたしたちは時間をかけて調査しました。この件について第一チャンネル報道局長キリル・クレイミョノフから一言。いま、わたしの隣にいます」
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