「学び直さなかったら後悔する」昼間の学校生活は新型コロナで崩れ去った… 公立夜間中学で出会った異国の友
交流を重ねるにつれ、牧山さんは日本についての理解を深めていった。冬休み前の終業式、山浦さんが急に礼儀正しく真剣な表情になったのを、今も鮮明に覚えている。最初は不思議に思ったが、「こういう時にはちゃんとするのが、日本の文化」と気づかされた。また、日本人のイメージも変わった。「アニメの見過ぎだと思うんですけど、不良とか怖い人が多いのかと思ってて。でも日本人って優しいんだなって」 山浦さんは以前、入学予定者を前にこの学校に通うことになったいきさつを話す機会があった。「他の生徒より遅れていても関係ない。やり直したいと決めたから、今ここにいる」。牧山さんは、その意志の強さに心動かされたという。コロナを乗り越え、初めてできた日本の友―。「友達として好きになっちゃったんです」と少し照れくさそうに話した。 ▽勉強は好きじゃなかった 2人の通った学校が最も重視するのは、まさに授業だ。直感的に理解できる理科の実験やローマ字を振った日本語…。教員たちは工夫を重ね、一つの授業研究に10時間費やすこともある。
また授業には複数の教員が補助に入る。生徒たちは日本語能力も人生経験もそれぞれ違うため、1人の教科担当だけでは対応しきれないのが実情だ。そのため教員たちは事前に話し合い、授業内容や狙いをみっちり共有する。生徒ファーストの理念を掲げ、ワンチームで試行錯誤を繰り返してきた。 そのかいあってか、2人とも授業は「面白い」「分かりやすい」と口をそろえる。山浦さんは外国籍や年配の生徒らとともに受ける授業から、新たな魅力を見いだした。「昼間の中学でやる内容を深掘りして教えてくれたり、他国の文化を知ろうという授業もあったり。その国の歴史や料理などを知ることができた」 牧山さんはサポートの手厚さに驚かされたという。社会の授業でプリントが配られると、漢字に英訳が付いている。「スペイン語もちゃんと書いてあるし、こういうのは本当に初めて」。また、数学では習った計算式が、実生活にどう生かされているかを学んだ。身近にあるコピー機を使い、拡大・縮小の倍率に「平方根」が使われていることを確認した。「そもそも考える力がないっていうか、勉強が好きじゃなかったんですよ。でもこの夜間学級に入って、その面白さに気がつけた。先生は分からせるとか、怒るんじゃなくて、これは将来役に立つよと。ちゃんと教わっていると感じた」