東京大空襲の記録「抹殺じゃないか」……1億円で「証言」撮影、公開は3分の1のみ お蔵入り30年ナゼ?【#みんなのギモン】
■建設計画が頓挫した「平和祈念館」
小野解説委員 「その理由は何でしょうか。東京都は1990年代前半に、東京大空襲を記録して展示する『平和祈念館』を建てようと計画しました。当時作成された館内のイメージ図では、再現模型や写真などを用いて戦争と平和を考える施設を目指しました」 「『証言映像』という記載もあります。当時を知る人の証言を上映する計画で、そのために都は1億円をかけて生存者を探し出し、330人の証言をビデオカメラで記録しました。ところが、祈念館をつくる計画そのものが頓挫しました」 「当時はもめました。戦争全体を伝えるべきとする側と、東京大空襲の被害のみに絞ろうとする側で対立し、議論がまとまりませんでした。加えて、都の財政難もありました。せっかく証言を撮ったのに展示する場所がなくなりました」 市來玲奈アナウンサー 「1億円をかけた貴重な証言ですよね。私たちの世代が次の世代にしっかりと伝え続けていくことも本当に大切だと思います。祈念館以外での公開(という選択肢)もあったのかなと…」
■証言は「祈念館での公開」が条件
小野解説委員 「それもできませんでした。祈念館での公開を条件に集めた証言だったからです。証言を撮影する際、相手に渡された同意書には『祈念館の資料として利用する』『同館が学術などの発展に資すると認めるものに限り』などと書いてあります」 「つまり、祈念館での公開以外の目的で使う同意を得ていないので、公開するには改めて本人たちの同意を得なくてはならないということです。そこで東京都は2022年、本人またはおおむね二親等以内の家族の同意を得ようと、同意書を全員の住所に送りました」 「330人のうち同意が得られたのは122人。撮影から約30年も経ち、宛先不明で戻ってきてしまうことや音信不通のケースが多くありました。連絡がつかない以上、同意が得られないままなので、残りの約200人の証言はいまだに公開される見通しが立っていません」 忽滑谷こころアナウンサー 「330人の方がつらい記憶もあった中で一生懸命語ってくれた声で、本当に貴重ですし、お蔵入りになってしまうのはあまりにももったいないですよね」