「我々は大恐慌に向かっている」トランプの“予言”は的中するのか?【2025年の株式相場を読む】
■ 社債の「債務満期の壁」とは 3点目は日本発の流動性マネーの供給が細ってきたことです。 日銀はこの十数年間、大規模な量的緩和を継続しました(日銀当座預金残高はその代理変数)。その結果、民間の余剰資金が大量に外債投資に向かい、回り回って株価を押し上げてきました(図5、図6)。 しかし、円相場が1ドル=160円に接近する中で、日本の物価や円金利も上昇し始めています。参院選が予定される2025年に、これ以上の円安は政治的に許容できず、いつ為替介入や利上げがあってもおかしくないと考えられます。 もはや日米の金利差に着目した円キャリートレードを安心してできる環境ではなく、その結果、日本の外債投資は頭打ちになっています。最近、米国金利が上昇しているのは、このためでもあるようです。 こうした状況に加え、さらなる懸念材料があります。 社債の「債務満期の壁」です。 2020年夏頃、コロナ禍を受けた金融緩和の影響で、Baa格(投資適格の下限となる格付け)の社債利回りは過去最低の3.3%台に低下しました。企業は資金調達に殺到し、2020年第2四半期には通常の4倍、約2兆ドルの起債がなされました(図7)。 社債は平均5年で償還されます。つまり、2025年上半期はその借り換え需要が急増するのです。
■ 金利上昇、株安に見舞われたトランプ氏はどう動く Baa格の社債利回りは今、6%近辺まで上昇しており、今後は起債の集中で社債金利はさらに上昇するでしょう。先に見たとおり、市中の余剰資金は枯渇しつつあり、企業は手持ちの株式を売却し、金利上昇でコストが上昇した社債の借り換えに対処しなければならないのです。 FRBの再三にわたる利下げにもかかわらず、長期金利は上昇の一途をたどっています。その要因の一つは、この2025年上半期から本格化する「債務満期の壁」によるキャッシュフローの逼迫だと考えられます。 かくしてトランプ次期大統領は就任早々、金利上昇と株安に直面するのではないでしょうか。もっとも、トランプ氏のことです、経済混乱の責任は前政権にあると非難し、「だからこそ行政機構の簡素化と関税の引き上げが必要だ!」などと強弁して、自らの政策を強引に推し進めようとするでしょう。 一方でFRBに圧力をかけ、量的緩和策(QE)を再開させることで、金利の低下を図るのではないでしょうか。 それによって株価は一時的にはV字で急騰する局面もありそうです。しかし、その効果は長続きしません。せいぜい半年程度でしょうか。その後はインフレと景気悪化が同時に進行するスタグフレーション化が止まらなくなり、トランプ氏が心配する恐慌にはならないまでも、株価は年末に向けてじり安となるように思います。 ※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。
市岡 繁男