IMF・世銀年次総会、出席者はトランプ氏復帰の影響を憂慮
David Lawder Karin Strohecker [ワシントン 28日 ロイター] - 21日から26日までワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会では、優先的に協議する公式な議題として、低調な経済成長、高水準に膨らんだ債務、激化する戦争が設定された中、出席者は11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利した場合に生じ得る影響を巡る不安に多くのエネルギーを費やしていた。 総会に集まった各国の財務当局者、中央銀行幹部、民間の関係者らはほぼ連日、最近の世論調査で民主党候補のハリス副大統領の優位がほぼ消失してトランプ氏が勢い付いていることを話題にしていた。 トランプ氏が返り咲いた場合、大幅な関税の引き上げや、政府債務の大膨張、気候変動への取り組みを後退させ、化石燃料の増産を優先することによって、世界の金融システムを混乱させる可能性が懸念されている。 日銀の植田和男総裁は24日の記者会見で「大統領選については、皆さん、選ばれた大統領がどういう政策をするか、そしてどちらが選ばれるか分からないということで不確実性が高いということを気にされていた」と述べた。 別の中銀幹部は匿名とすることを条件に「トランプ氏が勝利するように感じられ始めている」と不安を訴えた。 トランプ氏は全ての国からの輸入品に10%の関税を、中国からの輸入品には60%の関税を課すと表明している。こうした関税は報復関税の引き金となってコストを押し上げる公算が大きく、世界中のサプライチェーン(供給網)に打撃を与える。 ドイツのリントナー財務相は25日、ロイターのインタビューに応じ、欧州連合(EU)と米国が貿易問題で対立しても勝者は生まれず、共倒れになるだけだと警鐘を鳴らした。 金融市場では世論調査でトランプ氏が優勢になったことを受けて「トランプトレード」が復活している。主要通貨に対するドル指数は10月に入りこれまで3.6%上昇し、月間では過去2年半で最大の伸びとなりつつある。 トルコのシムシェキ財務相は「(米国の)財政赤字が拡大すると政府債務が増大し、債務が増えると長期金利が上昇する。それはまた、ドル高を意味するかもしれない。米国の高い長期金利とドル高は新興国市場にとって好ましくない」と話した。 ブラジル中銀のカンポス・ネト総裁は、トランプ氏の復帰を想定した市場の動きは既に同国の長期金利先物を押し上げる影響を及ぼしていると説明した。 IMFのゲオルギエワ専務理事は記者会見で、トランプ氏が勝利するとの見方が総会とIMFの政策提案に及ぼす影響についての質問に、総会での協議は足元の経済問題を解決することに重点をいていると回答。「われわれとしては、どのような課題が生じるのかを見極め、そうした課題にIMFがいかに建設的に対処できるかを見いだすことが重要だ」と語った。