「オキナグサ」佐賀・福岡県境の基山に春咲く花、住民「何とも言えない可憐さ」…行政と協力して保存活動
有明海沿岸に広がる佐賀市の「東よか干潟」と、佐賀県鹿島市の「肥前鹿島干潟」が、ラムサール条約に登録されてから、今年で10年を迎える。多種多様な生き物が生息し、独特の豊かな生態系が保たれてきた。節目を機に、干潟をはじめ、県内各地に息づく「さがの宝」である希少な生き物たちと、それらを守ろうと保護や保全活動に取り組む人々の営みを見つめてみたい。 【写真】「未来に残したい草原の里100選」に選ばれた基山の草原
佐賀県基山町と福岡県筑紫野市の県境にまたがる基山(404メートル)。その山頂一帯に広がる草原は、春風が頬をなでる頃になると、愛らしい花があちらこちらに咲き始める。
「うつむき加減の花は、何とも言えない可憐さを漂わせてね。綿毛になってからも、かわいらしくて。大きい株になると、そりゃあ見応えがありますよ」
オキナグサ――。それは基山に自生する希少植物だ。保護活動に取り組む「きざんオキナグサ保存会」の冨山茂会長(73)は、その魅力を語るとき、知らず知らずのうちに相好を崩す。
保存会の設立は2021年10月。登山愛好家らの訴えをきっかけに保護の機運が高まり、町民有志ら約40人がメンバーとなり発足した。その際、会長として白羽の矢が立ったのが、登山グループで副会長を務めていた冨山さんだった。
山登りは若い頃からの趣味。「子どもの頃の遠足と言えば、決まって基山だった」という地元の山にも、幾度となく登ってきた。オキナグサやフナバラソウといった希少植物の存在には気づいていなかったが、保存会の会長に推され、それらが自生できる環境の貴重さを学ぶうち、身近な山に咲く花々の魅力に引き込まれていった。
保存会では、草原を保つために行う年数回の草刈りに加え、メンバーらが自主的に植物の生育状況を確認。毎日のように山に登る熱心なメンバーもいる。町も会の事務局を担い、活動を支援。町まちづくり課の井上信治課長は「住民と行政が協力しあって活動していることは、町にとって大きな財産だ」と語る。