SANTAWORLDVIEWが語る、「SANTA」というユニークさの源泉、ヒップホップの無限性
ビートメイクするようになった理由
―もう一つ伺いたいのが、ご自身でトラックを作るようになったという点で。SANTAさんというと以前からトラックはYamieZimmerさんが手がけていることが多かったかと思います。どのようなきっかけがあって自分で作るようになったんですか? コロナがきっかけですね。緊急事態宣言が出た時に、これは活動が止まるなと思って、30万だか40万だかはたいてパソコン、スピーカー、キーボード、マイクなど機材を全部買い揃えました。でも、それまでもスマホのGarageBandアプリで時間ある時に作ってはいたんですよ。それを本腰いれてやろうかと決めて始めた感じです。でもなかなか世に出せるレベルにはならなくて、今回ようやくその水準に達したかなと。だから、そっちの方面も色々構想を考えてはいます。覆面かぶってビートメーカーとしてデビューしようかなとか(笑)。 ―YamieZimmerさんみたいな凄いトラックメイカーが身近にいると、学ぶことも多いのでは? 最初はLogicの使い方からスネアの入れ方まで、Yamieに教わりました。師匠は誰かと聞かれたら、Yamieって答えるかもしれない(笑)。でも、彼はビートメイカーの中でも異色な人じゃないですか。音数少ないけど個性が出せるっていう特別なカラーを持っているので、そういうところは真似できないというか。だから、最初の基本的なところだけ教わりました。ヒップホップはループ音楽だし、基本的にはヴァースとフックさえ作ればそれを組み合わせて完成させていけるので、途中からは一人で作れるようになりましたね。 ―サンプリングも? やってます。この前「異邦人」をサンプリングして、バレないだろうと思って先輩に聞かせたら、一発で「異邦人!」って言われました(笑)。 ―今作では「Arrivederci」をご自身でビートメイクしていますね。 あの曲はGarageBandなんですよ。飛行機乗ってる時に作りました。自分はもう最近はゲームもしなくなって、空き時間はビート作ってます。Apexやってると自分は弱いからすぐやられるし、そんなことでイライラしてるならもう曲作ろうと思って。あと、ピアノも独学で始めました。 ―今まではビートをもらってそこにラップを乗せていたと思うんですけど、自分で作るようになって、その順番も変わりました? そうですね。「成せば成る」は、メトロノームだけ鳴らして歌詞を先に書いてラップを録ってから、その後にトラックをつけてるんですよ。ケンドリック・ラマーはそういう手法でやってるとかで、自分も挑戦してみました。そうなると、フロウで仕掛ける感じではなくて、一定のメトロノームに合わせてとにかくメッセージを作っていく形になる。その順番では初めて作りましたね。フロウに捉われずに作れた。 ―SANTAさんの中での大きな変化ですよね。いずれ、何もかも全部一人で作ったアルバムを出すかもしれない。 いえーい、ファレルじゃん。でも確かに、自分は前からタイラー・ザ・クリエイターが大好きなんですよ。彼の作品はどんどん成長していってるし、ピアノも弾いて歌も弾いて、それがやりたかったんだろうなと思う。自分も同じです。それに、ラッパーもいつまでできるか分からないし。ラッパーって、いわゆる世の中のラッパー像というものがあるじゃないですか。それにいつまでも合うかは分からないし。ファレルってトラックメイカーともラッパーとも言わないでしょ。ファレルはファレル。だから、自分もSANTAって肩書になる。 ―というか、すでに今回のアルバム自体が少しずつ「SANTA」という内容になってきてますよね。ヒップホップが中心にありつつも、音楽性が幅広い。 それは嬉しいですね。今回、音がすばらしいでしょ。AWSM.も(甲田)まひるちゃんも、皆がすばらしい。今回のビートって、ストックしていたものが一つもないんですよ。一から作られたものばかり。「BEGIN」では、Taka Perryとスタジオに入ってセッションして作りました。ブーンバップ系でいこうってなって、Takaがドラム叩いてる間に自分が歌詞書いてフックのメロディを歌ってたら、Takaがそれいいね!って反応して入れてくれた。お互いのやりたいことが全て噛み合ってできた曲ですね。