「知事の座を追われて終わり」にしてはいけない兵庫県の“斎藤劇場”
百条委に参考人として出席した上智大新聞学科の奥山俊宏教授は一連の対応を「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図」と指摘しましたが、私もまさにその通りだと思いますし、これを知事の失職だけで終わらせていいとも思えません。 真相を解明して何らかの“けじめ”をつけなければ、「死をもって抗議」した告発者が報われないだけでなく、「公益通報者は保護されなければいけない」という真の教訓にはなりえないからです。 ■どんな組織でも起こり得る問題 ちなみに、片山・前副知事はこの調査の中で、告発者の職場まで乗り込んでパソコンを押収したうえ、その中身を詳しく調べ、情報源を厳しく追及したそうですが、よく似た対応が他県でもありました。鹿児島県警です。 報道機関への告発に絡む情報漏洩事件の関係先として福岡市のネットメディアを家宅捜索し、パソコンを押収して、そこに残っていた文書から別の内部告発を見つけ、もう一人の告発者の元県警幹部を割り出した件です。県庁と県警――舞台は違えど、トップの対応はほぼ同じで、鹿児島県警は2件の告発をいずれも全面否定したうえで、2人を守秘義務を破った公務員法違反容疑で立件しました。 違ったのは、県警は告発者を逮捕・拘束できることと、議会の対応です。鹿児島県議会は当初、総務警察委員会で本部長による事件隠蔽疑惑を追及しましたが、法的な調査権を持つ百条委員会の設置は見送られました。 ここから見えるのは、兵庫県の問題は単に知事のパーソナリティの問題だけでなく、どんな組織でも起こり得る問題だということです。そして逆に、兵庫は保守分裂選挙で当選した知事だったから議会の対応も厳しくなったものの、鹿児島のように県政与党が圧倒的多数を占める議会では、今回のような追及もされず、うやむやに終わってしまう可能性も高いのです。 だからこそ、今後はどんな組織でも原則、内部通報は第三者がその信憑性を確認し、公益通報者は保護される仕組みを徹底しなければいけません。その意味でも、今回は「知事が辞めたら終わり」にしてはいけないと思います。