日本の労働組合の成り立ち、特徴と春闘システム
産別連合体の「統一闘争」から「春闘」へ
戦後、労働者側が使用者側との交渉力を高めるために取り組んだのは、労働戦線を拡大し労働者が団結することであった。戦後2年目の1946年には、2つの全国的労働組合が正式に発足している。産業別にも、金属産業などを中心に、同業種の企業別労働組合が緩やかな評議体を結成し、さらに、より強固な連合体へと移行していった。 同業種の企業別労働組合の連合体(日本で産業別労働組合の中心的な形態)は、連合会として、産業別の統一闘争として賃金をはじめとする産業横断的な労働条件の引き上げに取り組んだ。「統一闘争」とは、企業別労働組合がもつスト権を背景に、産業ごとに要求提出日や回答日などの闘争のスケジュールを統一し、統一した水準を要求し、会社回答に対し統一した基準でスト回避の諾否を判断するというものである。 その年の企業業績が劣位にある企業の労働組合も相乗効果で同一の条件を確保するとともに、当該産業の未組織の中小企業労働者にも、いわゆる「賃上げ相場」を形成し、波及効果をもたらす意義があった。労働条件改善は賃上げだけでなく、労働時間短縮や新たな勤務制度創設、退職金、定年延長など幅広く、連合体による統一闘争が、欧米の産業横断的な労働組合に実質的に類似する効果を生んでいる。 こうした産業別の統一闘争を、産業をまたがって全国横断的に統一的に取り組むようになったのが「春闘」で、始まったのは1955年頃といわれている。 89年に全国組織4団体(「総評」「同盟」「新産別」「中立労連」)が「連合」を結成して以来、連合が各産業別労働組合と共に、企業別労働組合の労働条件改善闘争を指導してきている。バブル崩壊や長引くデフレ、リーマンショックなどにより、労働組合として「雇用か賃上げか」の苦渋の選択を迫られる時期もあったが、物価上昇や企業業績改善を背景に2024年の春闘は1991年以来33年ぶりに賃上げ率が5%を超える内容となった。非正規雇用で働く労働者の賃上げが進んでいることも最近の特徴である。また、春闘で労使が交渉するのは単に労働条件の改善だけではなく、当該企業の経営方針などについても労使で話し合うことも一般的である。 春闘は日本の労働組合にとって最も重要な活動の一つである。日本独自の「春闘」が、非正規労働者の労働条件改善も含めて、今後も働く者の生活と働きがいの向上につながることを心より祈念している。