タモンズ、夢破れた今も燃え続ける漫才への情熱「くすぶり方には自信がある」 『くすぶりの狂騒曲』で振り返る過去
■芸人たちの熱い関係性 トリオになる寸前だったタモンズ
――つきに改名し、その後の「おでん」というトリオになるか迷っていた部分も詳細に描かれます。コンビの紆余曲折を映画として振り返って、いかがでしたか? 【大波】今思ったら結局、腕がなかっただけなんやなって思うんです。でも、あの時は、それを理由だとは1ミリも思ってなくて。僕は自分の外に理由を探していた。で、安部は安部で自分の外に。安部は僕に理由を探して、僕は安部に理由を探していた。で、ぶつかってた。もがいて、ジタバタして、どんどん沈んでいってたんですけど、今思ったら、自分のせいやと思います。 【安部】やっぱり貧乏は悪やなと思いますね。悪っていうとあれですけど、僕らは本当に運が良くて、『M-1グランプリ』で、「もう1回頑張ろうぜ」と言い出した時期と、コロナ禍で配信が普及しだして、そこからテレビに限らなくてもお笑いをやってお金もらえるような仕組みができてきた。そこが重なっていた部分があって、作中でやっていたようなバイト3つ掛け持ちして、とにかくもがいていた時期から比べると、だいぶお笑いに対して向き合える時間も増えた。それがなんかデカかったかなとは思います。 ――劇中では、しらたきがインタビュアー役でカメオ出演されています。実際のしらたきさんとは? 【大波】実際はそいつもまだ芸人をやってるんで。別のコンビを組んでいて、一緒のライブとかも出てますし。作中では辞めたんですけど、今も元気にやってます。で、そいつには申し訳ないなという気持ちはある。そいつは今『M-1グランプリ』を目標に頑張ってる。僕らに余裕ができたので、僕らのライブとかに呼んで、ネタをやる場面をいっぱい作るようにしています。 【安部】そいつは今年コンビ組んだばっかりなんで、あと14回『M-1グランプリ』に出られるんですよ。54歳ぐらいまで頑張ってもらいたいですね(笑)。 ――あのシーンを撮影して感じたことは? 【大波】あの人って、しらたきだけじゃなくて、何人かが入ってるんですよ。大宮セブンができた時に、めっちゃお世話になってたメンバーで辞めちゃった人も入っていて。 ――元えんにちの望月リョーマさんですかね? 【大波】望月さんも入ってます。あそこで辞める決断をして、今もちろん幸せに別のジャンルで活躍してるんですけど、僕らがそこで辞める選択を取ってもおかしくなかった。なんか変な感じですよね。僕の未来線だったなんて容易にあったと思うんで。 【安部】作中で僕が「わ~」と言い出すのも、ホンマにたまたまちょっと早く劇場に行っただけなんです。なぜか根建さんも早く来てて、ちょっと2人の時間が長くて誰もいない空間があった。あそこに気を遣うほかの芸人さんがいたら、あんな話まずしてないやろうし。あの時間帯に、僕と根建さんが2人で楽屋におったから生まれた会話やった。そういう意味でもミラクルというか。 【大波】あの日は、コンビの最後の日でしたから。たまたま(安部が)早く来ていて、根建さんがたまたま早く来ていた。根建さんが遅く来てたら、そのままネタやって「タモンズ終わりです」となっていた。 ――もうトリオになる意向を伝えられた方もいらしたんですよね? 【安部】僕らのお世話になってる作家さん、マネージャー、初代のプロデューサーであるX氏には言ってました。最後に大宮の支配人に寄席の合間に「報告しに行こう」と言っていた。その直前でした。 【大波】僕はもう辞めるつもりで行ってるんで「最後のネタか」と思っていた。根建さんとこいつが話してるのを僕は知らないんで。着替えて「これで最後か」と言ったら急に「話がある」と言われて。「もう1回やりたいねん」と。3人になるの決まっていたので「え?」となったら、根建さんが来て「ネタ終わったら、言いに行く前にちょっと話させてくれ」と。それで地下の従業員用のスペースに行ったんです。僕とこいつと根建さんと福井さんで話して「どういうことですか?」みたいな。それで話して、その日、もう1回ネタやって帰ったんです。だから、そこがなかったら、1回目と2回目の間に言いに行っていて終わりでしたね。 ――その前にも相談はしていました。 【大波】作中にもあった、僕と福井さんと村氏と海野が飲みながら「こうなるんですよ。どう思います?」みたいな話をしていて。「いいんじゃない」という人もいたり、「タモンズはまだ行けるやろ」という人もいたりして。結構、飲みました。僕らが入れようとしたヤツが、福井さんと同期で。でも、東京NSCの同期なんで、福井さんは大阪NSC。福井さんは、こっちに来てから僕らと仲良くなったんで、そいつのこともあんまり知らんと。で、タモンズの今までの歴史はまだ知らないから「俺じゃ判断できへん」と思ったらしくて、根建さんに「聞いてあげてください。根建さんに間に入ってもらった方が、ちゃんとした判断ができると思うんですよ」みたいなこと言ってくれていた。それで、根建さんは早く来たんじゃないかな、というのもあります。想像ですけど。 【安部】芸人は、やっぱり人の人生には責任持てない。あんまりハッキリと「解散せん方がええよ」とか言わない、言い切らないようにして「お前らがやりたいようにやれよ」というのが、ほとんど。そんな中で根建さんに、ぽろっと言っちゃったから、ああいうことになった。 【大波】辞めんなと言っても、じゃあ売れさせられるんか、と言ったらそうでもない。あんまり、そう言えないんですけど、みんなは言ってくれた。 ――本当に実話が元になっているんですね。でも、福井さんはYouTubeで「唯一、ウソがあるなら、あの頃はPOLARはまだ流行っていない」と暴露していましたが…。 【大波】そうなんですよね(笑)。あの後なんですよ(笑)。衣装のことは何も言っていないんですけど、Pはじめいろいろしてくれたんだと思います。びっくりしましたよ、POLAR着ていて。