萩原利久は“誠実さ”ゆえの苦悩がよく似合う 2度目の朝ドラ『おむすび』で放つ存在感
NHK連続テレビ小説『おむすび』が新章へ突入。第11週は、就職活動を行う結(橋本環奈)と星河電器の野球部で活躍する翔也(佐野勇斗)、その周りの人々が描かれる週となりそうだ。第53話からは星河電器の社員食堂の若手調理師・原口役として、萩原利久が出演する。 【写真】獣医師姿の萩原利久 2021年放送のドラマ『美しい彼』(MBS)で知名度を上げた萩原。2024年も数多くの映画やドラマに出演していたが、彼が作品に出演しているときっと深い感情表現が味わえるはずだと、不思議な安堵感がある。それはメインキャストであろうと、1話ゲストであろうと変わらない。萩原が演じることにより、その役柄の実直さ、それによる苦悩や悲壮感がより濃く立ち上がってくるのだ。 思えば、2024年に萩原が演じた役柄は自身の運命に翻弄される役ばかりだった。主演を務めた『めぐる未来』(読売テレビ・日本テレビ系)では、最愛の妻・めぐる(早見あかり)の死を阻止しようと、奔走する襷未来を演じ、メインキャストの一人として出演した『降り積もれ孤独な死よ』(読売テレビ・日本テレビ系)では、主人公・冴木仁(成田凌)の腹違いの弟である蒼佑を熱演。仁への強い恨みをぶつける激しい芝居は、序盤の見どころの一つだった。後に、蒼佑は仁と和解するも、第6話で仁を庇って亡くなってしまう。蒼佑が自分の運命に振り回され苦悩する様子、仁と分かり合うまでの過程が丁寧に表現されていたからこそ、蒼佑の死はより鮮烈に映った。 ゲスト出演した『イップス』(フジテレビ系)では、ことごとく不運な殺人犯・宮永役としてシリアスとコメディーの塩梅がとれた芝居で、新たな魅力を披露。コメディーは、本人が真面目であればあるほど、面白おかしく転がっていくストーリーとのギャップを生む。真摯に物事に向き合う姿が似合う萩原だからこそ、宮永の異常なまでのツイてない設定が活きていた。 現在放送中の『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)でも、ドラマの空気を作っていく第1話のゲストとして、物語を牽引する緩急のある感情表現を見せた。塩屋は自身が送った「死ね」というメッセージによって、恋人の自殺を促したのではないかという後悔の念に襲われることに。塩屋の起伏の激しさとその異常さにより事件の行く末が読めず、それらを解決する主人公・神波亮子(趣里)の活躍が映え、ドラマの魅力がより分かりやすくなっていた。役柄が持つ役割を理解した的確な演技力があるからこそ、1話ゲストとしても重宝されるのであろう。 映画『朽ちないサクラ』では、主人公・泉(杉咲花)を支える正義感の強い若手刑事・磯川俊一を、『キングダム 大将軍の帰還』では、作劇上重要な役柄となる蒙毅を演じ、スクリーンでもその存在感を見せつけた。