同ラインでも作る冷蔵庫の種類が違う!? パナソニック草津工場へ「品質へのこだわり」を見にいった
ミックス生産方式で効率的な多品種生産を実現
では、実際にどのようなものづくりをしているのか、工場内の様子を見ていきましょう。 冷蔵庫は「ドアブロック」「庫内ブロック」「冷却風路」「キャビネットブロック」「機械室」の大きく5つに分かれており、まずはキャビネットと内箱の間にウレタン発泡によって断熱材を充てんする工程が行われます。 生産ラインでは、さまざまな型番の製品を一つのラインで製造する「ミックス生産」方式を採用しています。多品種を同時に製造できることで、多様化する顧客のニーズに素早く応えられるほか、在庫リスクの軽減が期待できます。 「高さの高いものや低いもの、横幅の広いものや狭いもの、奥行きが大きいものや小さいものと、いろいろなものがいっぺんに流れています。1ラインの中で同時に多品種を流しているのが一つの特徴です」(担当者) トップユニット方式のため、コンプレッサーの取り付け作業は階段を上がった場所で行われます。こちらではコンプレッサーと配管をロウ付けと呼ばれる作業で接合します。「非常に高い技能が必要になるため、社内で認定された人のみがロウ付け作業を行っています」(担当者)とのこと。 続いてドアの取り付けとビス締め作業を行います。どの製品にどのドアを取り付けるのかが指示されるので、それに従って取り付けていきます。 「取り付けに不備があると、ドアが落下してお客様に大きな怪我を与えてしまうことがありますので、安全工程としてビスの締め付け強度、ビスの本数に間違いがないかを専用のドライバーを使って管理しています」(担当者)
20年相当のドア開閉試験やガラスドアの強度試験などを実施
続いて、検査工程も見せてもらいました。ドア開閉試験では、家庭内での20年分に相当するドアの開閉を行う試験が行われます。 パッキンが冷えて硬くなり劣化しやすい冬場の寒い日の環境を想定し、約5℃の室内で1日24時間、約2か月かけてドアを開閉するとのことです。 設計時に品質保証部門でもドア開閉試験を行うのですが、こちらでは最終量産直前に「基本的に全モデルを試験します」(担当者)とのこと。 「(引き出しの)レールは金属部品ですので、ちょっとでも金属がこすれるような音が鳴った場合に設計を見直すことがあります。1か所1ミリ削るなど、そのレベルで改善しています」(担当者) ガラスドアの強度試験も見学しました。ビール瓶が振り子の下に取り付けられており、ある程度の角度から振り下ろされたビール瓶がガラスドアに当たっても欠けや割れがないかを確認するというものです。 「人間が小走りした時の速さのイメージで、毎秒220cmほどの速さで衝突させて割れないかを確認しています。ガラスは強化処理で割れを防ぐとともに、万一割れた場合でもクモの巣状に細かく割れるように工夫されています。大きくて尖った破片によってお客様がケガをすることがないように設計されています」(担当者) それにしても、ガラスドアの強度試験でビール瓶というのは少し意外ですが……。 「最初にガラスドアを開発した当時、ビール瓶以外にもいろいろなものをぶつけてみました。硬そうな鉄鍋でも、鉄は曲がって衝撃を吸収してしまいます。それに対してビール瓶は硬い上に変形しないので、衝撃をダイレクトにドア側に伝えることから、ビール瓶で試験をしています」(担当者) 一定の温度・湿度環境を保つ恒温室での動作試験も見学しました。全27部屋の恒温室で約300台の冷蔵庫を評価しており、その一つは室温約35℃、湿度約80%の高温多湿環境を再現する部屋でした。 冷蔵庫の庫内には多数の温度センサーを配置しており、ドアを開閉した後の温度の変化を庫内の箇所ごとに確認しているとのこと。 「1日数十回ドアを開け閉めした後に少しずつ温度が上がっていくのですが、それが一定温度を超えずに冷やし始めてくれるかどうかを確認しています」(担当者) どの部分が冷えにくいか、ということも分かるので、「冷気の流れの大きさを調整するなどの対策をしています」(担当者)とのことです。