「僕は間違ったのか」あふれるがん情報に踊らされ…余命宣告の母と息子 最後の2カ月間
■ 「一緒にいてくれて、うれしかったんじゃないかな」
「自分の行動は正しかったのか、当時、自分はどうすればよかったのだろうか」 母を亡くした後、ずっと考えていた。 抱えていた疑問を岸田さんにぶつけると、こんな答えが返ってきた。 「一緒にそばにいてくれるとか、一緒に治療に向き合ってくれる。そうしてもらえるのが僕もうれしかった。だからお母様も才賀さんがいつも通り変わらずに一緒にいてくれたことが、うれしかったんじゃないかなって思います」 確かに自分の行動は間違っていたのかもしれない。 しかしその間、母と一緒に過ごすことができた。 最後の2カ月しか一緒にいられなかったけれど、その2カ月をともに過ごせた記憶を大事にしよう。そう思えた。 「母の墓参りをしよう」 母の死を認めるのが怖くて、墓参りをすることが今までできていなかった。 自分の中に後ろめたさもあったと思う。 東京から片道3時間半近くかかる片田舎。 道中には田んぼと畑しかなかった。何もないこの場所で、確かに自分は母と過ごしていた。 母が埋葬されている寺に着き、墓前に手を合わせた。 「心配かけたけどおれは大丈夫だよ。母さんの息子でよかったよ。母さん、ありがとう」 それは、風が肌を刺すように寒い日だった。