編集部おすすめ! メキシコが舞台の傑作映画5選!
麻薬カルテルとの壮絶な死闘を描いた傑作!『ボーダーライン』
様々な犯罪が行き来するアメリカとメキシコの国境エリア。特別部隊に配属されたFBI捜査官ケイトは、ベテラン捜査官マットと謎多きアレハンドロと共に麻薬カルテルを殲滅すべく一大ミッションへと身を投じていく。そこで残忍な殺し合いや騙し合いの数々を目にするうちに、次第にケイト自身の中にある善悪や法のボーダーラインまでもが揺らぎはじめ……。 これは一寸先も見えないトンネルを手探りで進んでいくかのような戦いの物語だ。冒頭から最後のショットまで、いつ何が起こるかわからない乾いた緊張感が絶え間なく続く。主演3人の演技は抜群に突き抜けているし、それを束ねるヴィルヌーヴの演出も息つく暇を忘れさせるほど凄まじい。これに加えて讃えたいのが、脚本を手掛けたテイラー・シェリダンだ。”フロンティア”を舞台に非情な命のやりとりを描きつつ、枯れ果てたかに見えた人間性をそこに熱くほとばしらせるのが抜群にうまい。かくもすべてのピースが見事にハマり、細部まで研ぎ澄まされた本作。2010年代における最高峰の映画に推す声が多いのもうなづける。
3人のカウボーイを待つ過酷な運命とは?『すべての美しい馬』
1949年、生まれ育ったテキサスの土地を失い、新たな人生を求めてメキシコへ旅立ったジョンと、その親友レイシー。だが、途中で仲間に加わった少年ジミーの黒い馬をめぐって騒動が持ち上がり、さらに新たな働き口の牧場では美しい娘アレハンドラとジョンが激しい恋に落ちる……。コーマック・マッカーシーの原作小説を、俳優としても知られるソーントンが実写化。自然の美しさ、馬たちの躍動が際立つ一方、人間たちは不運と暴力の渦に巻き込まれて転がり落ちていく。だがそれだけでは終わらないのがマッカーシー文学で、主人公が序盤の心優しい男から成長し、自らの手で人生の手綱を引こうとする姿が心を打つ。 実は本作、もともとは3時間近くあったものが、ハーヴェイ・ワインスタインの命令で2時間以内に削ぎ落とされたのだとか。各シーンに込められた情熱の密度が計り知れない作品だけに、初志貫徹できなかった作り手の無念さは相当なものだったことだろう。いつの日かオリジナル版を目にする機会はやってくるのだろうか。