「望み」なのか単なる「ワガママ」なのか…「介護は子がするもの」と主張する親への関わり方 年末年始に親の意向を聞く際のトラブル回避術
そういう意味では参考になりそうなのが、筆者が診たAさん(80)のケースです。 ■親の意向が残された人の気持ちを助ける Aさんは脳出血を起こして倒れ、救急車で運ばれたものの、脳出血の後遺症の影響により、入院期間中にほとんど会話ができなくなり、反応するのも難しい状態になってしまいました。 さらにAさんは入院中に持病の心不全も悪化。主治医からは「これ以上治療しても、回復の見込みがない」と判断されてしまいます。
「最期を家族で一緒に過ごしたいなら、自宅に帰ったほうがいい」という主治医の言葉を受け、家族はAさんと自宅で一緒に過ごす決断をしました。 ところが退院直後、Aさんの体全身にひどい発疹が出てきました。これは脳出血の後遺症や心不全などとは別の新たな問題で、きちんと治療をしないと深刻な事態を招きかねません。 Aさんの在宅医として関わっていた筆者は、「病院での治療が望ましいかもしれません」と家族に伝えました。もちろん、今回の入院は延命治療のためではなく、発疹の治療であり、治る見込みがあるものです。
しかし、Aさんはかねて「延命治療はしないでね。できるだけそっとしておいてね」と家族に伝えていたこともあり、家族には「もともとの病気で限られた時間しかないなか、これ以上の入院は避けたい」という思いがありました。 余命が限られているなかで、このまま家でできる治療を続けるのか、それとも一度病院に戻って、発疹の治療を受けるのか。 本人の意思を知ることが難しいなか、判断は家族に委ねられました。 結局、この家族はAさんの意向をくみ、家で過ごすことを決めましたが、機会があるたびに、「どう過ごしたいか」という本人の意向を聞くことは、このような判断に迷うような状況においても、大事な判断材料として家族を後押ししてくれます。
意向を聞くことは、亡くなったあとの家族の助けにもなります。 家族は、本人が亡くなられたあとも「本当に正しいことをしたのか」「本人の気持ちにそっていたのか」という気持ちにさいなまれます。そういうときに「それでよかったんだ」という気持ちにしてくれるのが、生前のときに聞いていた言葉なのです。 ■親の意向を聞くときのヒント 話を、親の意向の聞き方に戻しますが、こうした話題は単刀直入には切り込みづらいもの。そこで親の意向を聞くときに参考になりそうなヒントを3つご紹介します。