USJに集結する脱東京・優秀人材。大手ITやメーカー出身者、外国人ら惹きつける人事戦略とは
韓国や台湾でワーホリ採用「日本の漫画アニメ好き」集まる
加えてユニークなのが、ワーキングホリデー制度を活用した外国人の採用だ。 2023年には台湾で説明会を開催し、16人を採用。24年には台湾に加えて韓国でも説明会を実施し、台湾から40人、韓国から30人と10月末までに70人を迎え入れた。 韓国は今回が初めての採用となったが、韓国語と英語と日本語のトリリンガルの応募者も多かったという。 「来園者のうち3~4割を海外からの旅行者が占める現状において、日々のゲスト対応のみならず、パーク全体のサービスレベルの向上に大きく貢献してくれると期待しています。インクルーシブなテーマパーク運営をするには、園内放送1つとっても、外国人当事者の意見を聞くことがとても大切なんです」(田口氏) 応募者の動機としては、「日本の漫画やアニメが好き」ということ、そして「日本流のおもてなしを学びたい」という2つの共通点があったそうだ。USJは日本発の漫画・アニメIPとコラボしたアトラクションやショーが多く、うってつけというわけだ。 2025年以降はさらに拡大し、ワーキングホリデーだけで100人超の採用を目指す。 さらに、ワーキングホリデーは基本的に1年間の雇用だが、引き続きUSJで働くことを希望する人には、USJが就労ビザへの切り替えをサポートするなど、長期的なキャリアを築ける環境の整備を進めているという。
万博を控えたUSJが目指す「筋肉質な組織」とは
そもそもなぜこうした採用戦略に舵を切ったのか。田口氏がユー・エス・ジェイに入社した2023年はアルバイトスタッフの6割超が学生で、3~4年で辞める人が多く、卒業シーズンの3月には人手不足に陥っていたのだ。 田口氏は「引き続き学生の皆さんのお力もお借りします」と前置きした上で、言う。 「ありがたいことに今のUSJには閑散期がなく、1年を通して安定した労働力を確保する必要がありました。 また少子高齢化が進む日本の状況に加えて、大阪は万博も控えています。関西近郊の若者という1つの限られたパイを、たくさんの企業で奪い合う構図を脱したかった。 目指すのは“筋肉質な”組織です」(田口氏) 「スタッフの人数は多いが1人1人が働ける日数や時間は限られている」状態から、「少人数でも時間も期間も長く働いてもらえる」環境を整備しようと、試行錯誤している最中だという。
竹下 郁子